企業では新入社員が続々現場に配属される時期だが、近頃の新人には気になる傾向がある。仕事には熱心で意識も高い。ただ、なぜか異様に「上から目線」なのだ。
「最近わが社で人事異動があり、本命視されていたAさんではなく、若いBさんがGM(ゼネラルマネージャー=部長職)に就いたんです。社員の飲み会でそれがネタになった際、2年目のCがいきなり、『結局、出世は実績より人望とかキャラクター性で決まるってことですよ。でもAさんがBさんに敬語で話しかけたりするところ見ると、正直、微妙っすよね』と言い出したんです。何様のつもりだって、一気に場が白けました」(大手メーカー社員)
最近目につく、こうした若手社員の「上から目線」を分析した『「上から目線」の構造』(日経プレミアシリーズ)は、昨年末の発売以来、7万部のロングセラーとなっている。著者で心理学博士の榎本博明・MP人間科学研究所代表がいう。
「中高年のビジネスマンから大きな共感が寄せられる一方、若い世代からは『この本のほうが上から目線だ』と反発の声も出ています(苦笑)。私が関わった各世代700人を対象とした調査では、30代のビジネスマンが上から目線を感じる相手は、上の世代よりも20代社員のほうが多かった。若手社員の上から目線は、組織内コミュニケーションを疎外するため、いまや社会問題です」
冒頭のように、さも評論家のような物言いをするのが、「上から目線」の大きな特徴だという。
「『うちの部長も成長したよね』『課長もいろいろ考えてるんだな、見直したよ』とか、『いまのうちのやり方じゃ通用しないよ』などと、自分を高みに置いた言い方をする。彼らは自己愛が強いため、本気になってうまくいかないと誇大な自己が維持できなくなるため、当事者にならずに評論家的な立ち位置をとるんです。
もうひとつ、自信のなさからくる『見下され不安』があります。不安だと相手の親切も見下しているように感じられ、見下されないために、逆に周りを見下すわけです」(榎本氏)
※週刊ポスト2012年6月8日号