国際情報

米国の地上攻撃用宇宙兵器“神の杖” 破壊力は核爆弾に匹敵

 宇宙戦争といえば、かつては映画の中だけの話だったが、もはやそれが米中間で実現する可能性が出てきた。しかも、その宇宙戦争は「宇宙から地球を攻撃」するという戦略が加わったことにより、“雲の上”の話でさえなくなりつつある。

 宇宙から地上への究極的な攻撃兵器の構想がある、と軍事評論家の野木恵一氏は指摘する。

「地上攻撃のための宇宙兵器として米国で構想されているのが、“神の杖”と呼ばれる兵器。直径30cm、長さ6m程度のタングステン製、または劣化ウラン製の金属棒を重力加速度を用いて地上に突き刺すことを想定したもので、その速度は時速1万km以上になり、破壊力は核爆弾に匹敵するとされる。中国も、米国の空母を攻撃するために、金属弾のようなものを考えているようだ」

“神の杖”構想の現実化の時期など詳細は明らかになっていないが、それと同様に宇宙空間から飛翔体を猛スピードで激突させる兵器として、米国でより具体的な研究・開発が進められているのが、米空軍と国防高等研究計画局(DARPA)が開発中の極超音速飛翔体「ファルコンHTV2」である。

 マッハ20で飛行し、地球上のどこへでも1時間以内に攻撃することが可能だ。DARPAは昨年11月、HTV2より射程が短く、速度マッハ5のAHW(先進型極超音速兵器)の試験飛行にも成功している。『軍事研究』編集長の河津幸英氏が語る。

「このほか宇宙空間の軍用輸送機であるクイックサットなども構想されているが、ファルコンHTV2が現在、一番現実味のある宇宙兵器だ。地上からロケットで発射し、一度宇宙空間に出てから、マッハ20で大気圏に再突入する。

 この兵器は、座標情報さえあれば地上の目標をピンポイントで狙える。威力はすさまじいので、核弾頭もいらない。貫通力が高く、特に地下施設の破壊に有利だ。

 ちなみに、こうした攻撃兵器の宇宙空間への配備は、そもそも宇宙条約により禁止されている。しかし、衛星にせよロケットにせよ、民用と軍用の区別は無いに等しいのが宇宙技術。平和利用の名目はどのようにも立てられる」

 宇宙戦争は「宇宙から地球を攻撃」するという戦略が加わったことにより、“雲の上”の話ではなく地上戦の帰趨を決する鍵をも握ることになる。

※SAPIO2012年6月6日号

関連記事

トピックス

旧統一教会は今後どう動くのか(時事通信フォト)
解散命令を受けた旧統一教会 「自民党への復縁工作」もありうると鈴木エイト氏指摘、教団と議員の関係を示す新情報リークの可能性 石破首相も過去に接点
週刊ポスト
藤川新監督(左、時事通信フォト)の船出とともに、名物商店街にも大きな変化が
阪神「日本一早いマジック点灯」のボードが電光掲示板になっていた! 名物商店街が今季から「勝った翌日に減らす」方式を変更 貼り替え役の店長は「ようやく解放される」と安堵
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん
《ドバイの路上で脊椎が折れて血まみれで…》行方不明のウクライナ美女インフルエンサー(20)が発見、“危なすぎる人身売買パーティー”に参加か
NEWSポストセブン
公開された中国「無印良品」の広告では金城武の近影が(Weiboより)
《金城武が4年ぶりに近影公開》白Tに青シャツ姿の佇まいに「まったく老けていない…」と中華圏のメディアで反響
NEWSポストセブン
女子ゴルフ界をざわつかせる不倫問題(写真:イメージマート)
“トリプルボギー不倫”で揺れる女子ゴルフ界で新たな不倫騒動 若手女子プロがプロアマで知り合った男性と不倫、損害賠償を支払わずトラブルに 「主催者推薦」でのツアー出場を問題視する声も
週刊ポスト
林芳正・官房長官のお膝元でも「10万円疑惑」が(時事通信フォト)
林芳正・官房長官のお膝元、山口県萩市の元市議会議長が“林派実力者”自民党山口県連会長から「10万円入りの茶封筒を渡された」と証言、林事務所は「把握していない」【もうひとつの10万円問題】
週刊ポスト
本格的な活動再開の動きをみせる後藤久美子
後藤久美子、本格的な活動再開の動き プロボクサーを目指す次男とともに“日本を拠点”のプラン浮上 「国民的美少女コンテスト」復活で審査員を務める可能性も 
女性セブン
24時間テレビの司会を務めた水卜麻美アナ
《水卜アナ謝罪の『24時間テレビ』寄付金着服事件》「まだ普通に話せる状況ではない」実母が語った在宅起訴された元局長の現在
NEWSポストセブン
すき家の「クチコミ」が騒動に(時事通信、提供元はゼンショーホールディングス)
【“ネズミ味噌汁”問題】すき家が「2か月間公表しなかった理由」を正式回答 クルーは「“混入”ニュースで初めて知った」
NEWSポストセブン
スシローから広告がされていた鶴瓶
《笑福亭鶴瓶の収まらぬ静かな怒り》スシローからCM契約の延長打診も“更新拒否” 中居正広氏のBBQパーティー余波で広告削除の経緯
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・HPより 写真はいずれも当該の店舗、スタッフではありません)
《丸ごとネズミ混入》「すき家」公式声明に現役クルーが違和感を覚えた点とは 広報部は「鍋に混入した可能性は著しく低い」と回答
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 山本太郎が吠えた!「野党まで財務省のポチだ」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 山本太郎が吠えた!「野党まで財務省のポチだ」ほか
NEWSポストセブン