東京電力は7月1日から、家庭向け電気料金を平均10%値上げすると決定した。しかし、この夏は東電の電気代が値上げされるだけでなく、全国的な節電要請も実施される。
政府が5月中旬に決定した節電対策によると、東北、東京電力には数値目標がなかったが、その他は関西電力の15%をはじめ、5%以上の節電要請がされた。節電目標が達成されず電力需給が逼迫した場合は、地域と時間帯を区切って強制的に電力をストップする計画停電の実施が予定される。経済評論家の森永卓郎さんは計画停電が実施されたら困るのは弱者だという。
「昨年、計画停電が実施されたときは工場のラインが止まるなど、生産活動に大きな影響が出ました。市民生活も大混乱。エアコンも使えず、熱中症になる人が続出するでしょう。駅のホームが暗くなって弱視のかたには危険だし、エスカレーターが止まって困るのはお年寄りや妊婦です」
なかでも“危険度”が高いのが、節電目標率が全国最高の15%である関西電力だ。関電が突出するのは、原発への依存度が高いから。総電力に占める原発の割合はおよそ5割に達する。関西電力広報室の話。
「原発の再稼働の見通しがつかないため、この夏は電力が足りなくなると予想されます。一昨年のような猛暑になると広域的な停電が起こる可能性もあります。そこで、15%の節電をお願いすることにしました。火力発電の再稼働など、できることはすべてやった上での措置です」
だが、大島教授は、家庭は15%節電を過剰に意識する必要はないという。
「関西電力は当初この夏の電力は19%不足すると報告しましたが、これは8月の昼間いちばん暑いピーク時の不足分です。一日中節電する必要はなく、ピークの午後1~4時さえ乗り切れればいい。家庭でもできるだけ節電したほうがいいと思いますが、健康を害するほど無理な節電は必要ありません」
関電は本当にすべての手を打ったのだろうか。政府の第三者委員会(東京電力に関する経営・財務調査委員会)の委員を務めた経営コンサルティング会社「A・T・カーニー」の笹俣弘志さんは、政府や電力会社の対応の遅さを批判する。
「1年も前から電力不足になることはわかっていたのに、政府や電力会社は充分な対応をとってこなかった。原発が再稼働するから大丈夫という見通しの甘さがあったんです。石油で発電してきた火力発電所を、天然ガスで発電できるよう改造するだけで、発電量は2倍近くになる。それなのに、こうした火力発電の発電効率を上げる対策を充分にやってこなかった」
次々と明らかになる電力会社の問題点。われわれは我慢するしかないのだろうか。経済ジャーナリストの荻原博子さんは“東電の解体”を国民が求めるべきだという。
「電力会社は民間会社であるがゆえに、これまでどこからも厳しいチェックがはいらなかったんです。ぬるま湯の経営体質を改善するには、まず東電をJALのように破綻させるべき。会社の全部にメスをいれてから、再建すべきです」
※女性セブン2012年6月14日号