博識な方を見ると「この人はどれだけ勉強したのだろうか…よし、俺も頑張って勉強しよう」と思っても人生は無情なもの。フジテレビ系バラエティー番組『ホンマでっか!?TV』でもお馴染みの脳科学者・澤口俊之氏は、知能指数をあらわす“IQ”は先天的なものであると語ります…。
* * *
さて、みなさんは、「IQが高いと天才だ」とか「天才はIQが高い」と思っているのではないでしょうか? これは誤りとはいえないまでも、極論です。IQの70~80%は、遺伝要因であることがわかっています。まさに「生まれながら」という要素が大きいので、天才は、「天賦(天からの授かりもの)」だといえるでしょう。
とはいえ、IQが高いからといって独創的で意味のある業績を生み出したり、残したりできるとは限りません。天才が天才になるのは、脳の構造と使い方が独特だからです。
「20世紀の天才学者」とも言われるアインシュタインの場合、脳が独特な成長パターンを示したことが、彼を天才たらしめた大きな要因だと推測できます。彼は子供のころから、数学や空間に関することについて優れた才能を発揮する一方、言語能力の発達には問題があったとされています。
脳には、それぞれの能力・知能に対応する神経システムが存在します。アインシュタインの場合、論理的・空間的神経システムが良く発達したと思われます。前述した相対性理論は座標系の理論でもあるので、空間的能力は非常に重要だからです。
既に死去した天才や偉人の脳を調べることはとても困難ですが、アインシュタインの場合、非常に稀なことに、死後の脳標本が調べられています。その結果、彼の脳は、論理的・空間的神経システムに深くかかわる脳領域が独特な発達をしていたことがわかりました。
具体的には、頭頂葉の下部にある「下頭頂小葉」という領野(場所)が、通常の人より15%も大きかったのです。この領域は、論理的・空間的神経システムの中枢で、この領域と前頭前野の相互作用が「創造性」に深く関与します。
ところが一方で、シルビウス溝(外側溝)という溝と「頭頂弁蓋」という領域がなく、独特の構造をしていました。この弁蓋部にはブローカ野という言語野を含むので、彼の言語の発達に問題があったとされることと整合性がとれます。また、弁蓋部がない、あるいはあっても活動レベルが低いと「物事に執着する」という傾向が出てきます。アインシュタインは、
「私は天才ではない。ただ、他の人よりひとつのことと長くつきあってきただけだ」 という言葉を遺していますが、他人より執着心が強いことを、自覚していたのかもしれません。
ちなみに私も、数学や物理は非常に得意でしたが、国語や古文はまったく不得意でした(ドーデモイイですね…)。
※女性セブン2012年6月14日号