オウム真理教の出家信者としてサリン生成に関与し、殺人罪などの容疑で指名手配され、17年もの逃亡生活の末に逮捕された菊地直子容疑者(40才)。その足取りが最後に確認されたのは、1996年11月中旬まで潜伏していた埼玉県所沢市のマンションの一室にあるアジトだった。
ここで生活していたのは、特別指名手配犯として現在も逃走中の高橋克也容疑者(公証役場事務長逮捕監禁致死の実行犯、54才)を含む男性信者4人と、女性は菊地容疑者1人。警察がこのアジトに踏み込んだときには、保温状態のままの炊飯器や食器類が散乱しており、風呂場には女性の下着が放置されている状態だった。室内は、5人が生活するために居住空間が段ボールで5つに仕切られていたという。
すでに菊地容疑者らの姿はなかったが、そこには彼女の小さなメモ帳のような「ノート」が置かれたままになっていた。そのノートに綴られていたのは、「警察に出頭するか、逃走を続けるか」の葛藤のほか、菊地容疑者の性に対する生々しいまでの欲求や複数の男性への愛情だった。
まず名前を挙げられた男性は、アジトで共同生活を送っていた元信者M(ノートでは実名。45才。以下、服役後、すでに釈放されている元信者についてはイニシャルで記す)。Mへの思いからか、彼女はふたりでの逃亡生活を想定して、こう記している。
<逃げる為には性欲を利用してもいいんだという考えに走ることになり、Mも私も性欲とたたかおうとしなかっただろうから、そこで二人の関係が成立してしまい、(中略)性欲の捨断ができない>
教団の教義では、セックスは「破戒」とされ、性欲は「邪悪なもの」とされていた。しかし、教祖は逮捕され、彼女の信仰は大きく揺らぎ始めていたのだろう。20代、30代の男女が肩を寄せ合って生活するなかで、自分の中の性欲を見つめざるを得なくなるのは当然だったかもしれない。
※女性セブン2012年6月21日号