6月6日に開催されたAKB48の選抜総選挙を、『週刊ポスト』誌上で「逆説の日本史」連載中の作家・井沢元彦氏がリポートする。題して「逆説のAKB48 総選挙は下克上である」。
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AKB48の第4回選抜総選挙に行ってきた。
「なんでボクに取材させるの?」と編集長に聞くと、「いやー、AKBをまったく知らないような人が行った方が面白いからですよ。井沢さん、AKBのメンバーなんて1人も分からないでしょ」とのたまう。
失礼な、前田敦子ぐらいは知ってるし、他にも2、3人ぐらいは顔と名前が一致する。そもそも仕掛人の秋元康氏とは親交もある。
でも、なかなか面白そうなので行くことにした。いざ行ってみると会場の熱気に圧倒された。いや、すごいね、日本はこれだけ元気なのかとあらためて驚いた。その割には会場の聴衆のマナーも悪くない。
それにしてもあらためて思ったのはAKBグループという一つのシステムの、考えぬかれた構造だ。トップのメンバーを固定せずに総選挙ですべてを決める。今回の選挙でも実例があったが、若手の研究生が先輩を抜いて上のグループに入ることもできる。なんというガチンコ勝負だろう。こんな競争社会見たことがない。戦国時代の下克上のようだ。
一方、有権者として参加するファンは、自分の応援するアイドルを、自分が汗水たらして働いて得たカネで応援することができる。CDを買えば買うほど投票権が手に入るからだ。1人1票ではないのである。
相撲取りを応援するタニマチは相当のお金持ちでないとムリだが、これなら貧乏学生(今や死語か)でも、充分にタニマチ気分を味わうことができる。これはタニマチの大衆化だ。やっぱり秋元康は天才なのだろう。このシステムなら世界を相手に商売できる。
さらに言うならば、会場のこのエネルギーを日本のために使えないか。例えばボランティア活動した若者により多くの投票権を与えるとか。本物の国政選挙に行ってちゃんと国民の義務を果たした人しかAKB総選挙の投票権はないことにするとか(今議論されている通り、選挙権は18歳まで引き下げればいい)。投票率も劇的に上がって政界も変わるに違いない。
いや、あながち冗談ではない。「AKBが動けば社会も動く(この日の司会者の徳光和夫アナの言葉)」なのだから。
撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2012年6月22日号