経済アナリスト・森永卓郎氏は「今のまま野田政権が続く限り、“デフレ脱却・株価上昇”シナリオはほぼあり得ない」と分析している。しかし、日本経済がそうならないシナリオも存在するという。以下、森永氏の解説だ。
* * *
早期にデフレ脱却が実現する可能性はあります。政権交代が起こることです。政権が代われば、政策もガラリと変わることが考えられる。そもそも、政府がデフレ脱却に取り組む姿勢をきちんと見せれば、デフレはすぐにも終わらせることができるのに、それをやっていなかっただけなのですから。
その意味で、小沢一郎・元民主党代表に無罪判決が出たことは、政界のみならず日本経済に大きな変化をもたらす予兆といえそうです。民主党の中でも半分以上の人は、本心では消費税引き上げには反対だと思われます。裁判の結果を受けて、小沢氏がまた民主党内で強い政治力を持つまで復権を果たせば、政治が変わっていく可能性は高いと思われるのです。
さらには、野田総理が消費増税にあくまでこだわれば、小沢グループが民主党を離れ、橋下徹・大阪市長を中心とする「第三極」グループと手を組み、政権を奪取するというシナリオさえ浮かび上がってきます。
仮にこの勢力が政権を握った暁には、ただちに金融緩和というカードを切ってくると予想されます。大震災の復興資金に財政出動をしてしまっているので、経済政策として新政権が打てる手として、選択肢はもはや金融緩和策しかないからです。
また、日銀・白川総裁の任期が来年4月に切れることが、デフレ脱却に弾みをつける要因になるかもしれません。小沢・橋下グループ政権が誕生していれば、日銀総裁に金融緩和派の人を民間から抜擢することもあり得ると考えるからです。そうなれば、デフレ脱却・株価上昇で日本経済は一気にジャンプアップするとみます。
その一方、政権を握っている野田・前原グループが自民党の谷垣グループと談合して、話し合い解散に持って行って連立政権をつくるというシナリオもあり得ます。この場合は、デフレ脱却は相当先になりそうです。
※マネーポスト2012年夏号