橋下徹・大阪市長が進めた「入れ墨調査」に労組側は猛反発している。だが、その主張は市民感覚とはかけ離れたものだ。「入れ墨はOK」とでも言いたいのか。ジャーナリストの武冨薫氏が、大阪市労連の書記長に聞いた。
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地方公務員法30条(服務の根本基準)では、「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務」し、「職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」と定めている。
労組や弁護団は「幸福追求権」や「プライバシー」を楯に入れ墨は表現の自由だと主張するが、問題は職員の入れ墨が市民に恐怖心を抱かせ、公共の利益に反する場合、公務員として「個人の表現の自由」と、「公共の利益」のどちらが優先されるべきかである。
橋下市長の立場は明らかだ。入れ墨が合法であっても「行政権力を持つ公務員としてふさわしくない」と市職員に限定して職員倫理規定で禁止するというのであり、ルールに従わない職員を処分するのは市長の権限である。
しかし、この「入れ墨が公共の利益に反する」という問題について、労組や弁護団は明らかに誤魔化している。
〈仮に大阪市の公務遂行において、例えば福祉現場など、対象市民が弱い立場にあって市職員の入れ墨等に対して畏怖心を抱く恐れがあるという場合にあっても、入れ墨等の調査は全職員に記名式で回答を求める必要はなく、各職場の上司が個別に職員に確認し指導する等の方法によれば足りる〉と、調査手法の問題へと苦し紛れの論理のすり替えを行なっているのである。
労組は、あくまで「職員は入れ墨OK」にしたいのか。大阪市労連の田中浩二・書記長にぶつけた。
「個人の表現の自由というのはあくまで弁護団の専門家としての見解。入れ墨やタトゥーがファッションの一部として認知されてきたとはいえ、直に市民に接する市職員のモラル、公務員としての資質が問われても仕方がない。だが、外から見える部分の入れ墨が問題なら所属長が個別に面談すればいい。業務命令によるアンケートという調査手法が人権侵害にあたる恐れがある、と抗議している」
しかし、面談調査では、本人が否定すれば、上司は「入れ墨はない」と報告せざるを得ない。一方、文書による自己申告なら、文書管理を徹底すればプライバシーはより守れるし、本人が虚偽報告すれば即、処分対象になる。なれ合いも排除できるはずなのだ。
※SAPIO2012年6月27日号