尖閣諸島を守るためには、弱腰外交を続ける丹羽宇一郎・中国大使の更迭が必要と語るのはジャーナリストの櫻井よしこ氏だ。同氏を更迭したうえで日本は何をすればいいのか――櫻井氏は、日本はベトナムに学ぶべきだと語る。以下、氏の解説である。
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丹羽宇一郎在中国日本大使の短絡さや外務省の及び腰とは対照的に、しなやかにしたたかに中国と対峙し、国益を守ろうとしているのがベトナムです。
ベトナムはGDPにおいて中国の約50分の1、軍事力も比較にならないほど弱小です。それゆえ細心の注意を払って中国との摩擦を避けながら、極めて現実的な対応をしています。
1974年に中国に西沙諸島を奪われたベトナムは、その領有権を主張し続ける一方で、南沙諸島に領有する21の島々を守るために、人が住めるような島にはまず軍人を居住させました。さらに一般国民の移住を奨励し、寺院を建てて6人の僧侶を送り込みました。診療所や学校も建て、人々がその島に定着できるようなコミュニティをつくりました。
この5月、私がベトナムを訪問した際、ベトナム外交学院戦略研究所事務次長のグエン・フン・ソン氏は「国民全員で国土を守る国民戦争だ」と言いました。一般の国民が生活を営んでいれば、中国も手を出しにくくなるからです。
ベトナムはかつての敵・米国との関係を深め、TPPへの参加も表明しています。中国はこれに反対し、圧力をかけ続けていますが、ベトナムは経済でも新たな発展段階に進もうとしているのです。
彼らが目指しているのは、より豊かでより強く、より自立したベトナムです。これに日本は最大限の協力をすべきですし、同時にベトナムから多くを学ぶべきです。ベトナムより国力も軍事力もはるかに勝る日本は、より毅然と中国に対峙できるはずです。
具体的には、尖閣諸島を東京都(本来は国)が購入するだけで終わらせないことです。本格的な灯台を設置し、港を整備し、無線基地やヘリポートもつくる。宿泊施設も整えて政府関係者や石垣市の職員などが常駐し、海上保安庁や海上自衛隊がしっかり巡回する。
緑の島にするために生態系の研究者や漁業関係者など民間人も頻繁に出入りするようにする。石垣市の中山義隆市長が提案しているように、国際的なフィッシング大会を開催するのもいいでしょう。
さらには、台湾と協定を結んで、台湾の漁業関係者に入会権のような特典を認め、双方の漁船がともに尖閣周辺の海域で漁ができるようにする。石垣の漁業組合と台湾の漁業組合が合弁会社をつくり、獲った魚を台湾で加工し、日本が輸入してもいいでしょう。
台湾が日本の統治下にあった時には、尖閣周辺の海域では日台の漁民が共に漁をしていました。この海を日台の共栄の海とすれば、中国と台湾が尖閣問題で手を組むこともないはずです。
※SAPIO2012年6月27日号