みうらじゅん氏は、1958年京都生まれ。イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、ラジオDJなど幅広いジャンルで活躍。1997年「マイ ブーム」で流行語大賞受賞。仏教への造詣が深く、『見仏記』『マイ仏教』などの著書もある同氏が、最近見学を行なったという“火葬炉”について解説する。
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人生初の火葬炉工場見学は驚きの連続だった。通常の火葬施設では、遺族であっても火葬炉手前の前室までしか覗くことができないが、今回は、火葬炉の内部を見ることができた。
火葬炉専門メーカー富士建設工業の首脳陣は、火葬時に棺に入れてほしくないものなど、色々なことを伝授してくれた。
まず、金属類。代表的なものはメガネだ。普段メガネをしている人が、亡くなってメガネなしで棺に入ってると、最後のお別れの際に顔の印象が違っていて、とまどうことがある。だが、メガネをかけたまま、火葬してしまうと、溶けたメガネが遺骨に張りついてしまうことが多いらしい。
1000度前後の高熱では、メガネ程度の金属は溶けてしまうというわけだ。これはちょっと怖いね……。
そういえば、5月14日の朝日新聞には不整脈学会が、ペースメーカーをつけた遺体の受け入れ態勢や、破裂による火葬場職員のケガの実態について調べることになった――ということが報じられていた。
何も知らずに火葬をすると、炉内で爆発することがあり、火葬場職員がケガをすることも実際あるらしい。ペースメーカーをしている人には対応策があるそうなので、事前の申告は必須なんだとか。
そういえばウチのおじいちゃんも、ピース缶を蓋をしたまま棺に入れたら、破裂して大変なことになったことがあったわ。火葬直前の一時は遺族にとって、故人との最後の別れの場でもある。棺に故人の大好きだったものを入れたいと思うのは人情だろう。
だが、ガラス類は金属同様に溶けて遺骨に張りついてしまうし、故人が好きだったからといって、一升瓶を入れたりするのは、慎んだ方がいいらしい。化繊のぬいぐるみなんかも同様だ。そういえば、葬儀社の人が化繊の経帷子(死装束)は、選ばない方がいいですよっていってたけど、そういう理由なんだな。
※週刊ポスト2012年6月29日号