世界のエネルギー事情が大きく変わろうとしている。とくに、シェールガスを代表とする、新しい天然ガスの実用化が進んでいる。これらは、世界の経済にどう影響するのか。大前研一氏が解説する。
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従来のガス田以外の場所から生産される新たな化石燃料「非在来型天然ガス」の開発が急速に進んでいる。その代表はシェールガスだ。
地下3キロメートルあたりにある頁岩(シェール)層に貯留されている天然ガスを砕き飛ばして採掘するフラッシングという新しい技術が開発され、アメリカで生産量が飛躍的に増大している。このためアメリカでは、天然ガスの価格が1年前のほぼ半額になり、原油価格も大幅に引き下げられる方向に向かっている。
非在来型天然ガスには、このほか砂岩層に貯留するタイトガス、石炭層に貯留するコールベッドメタン(炭層ガス)などがある。これまで非在来型天然ガスは、地下深く埋蔵されていて採掘に高度な技術や初期コストが必要となるため開発が遅れていたが、技術の進歩と原油価格の高騰によって採算が合うようになり、実用化が加速しているのだ。
非在来型も含めた天然ガスの生産・利用が拡大することには大きなメリットがある。まず、埋蔵量が豊富で、まだ160年分(在来型60年分、非在来型100年分)あるといわれているから、OPECが独占している原油の価格高騰に対する抑止力となる。
また、その豊富な資源がヨーロッパや中国に眠っていることが確認され、取り残されてきたアメリカの大平原(グレートプレーンズ)もエネルギー産出地域として一気に景気が浮揚してきている。
一方、地下深くに高圧水を注入して再び戻すことから、活断層が滑り地震が起きやすくなるという問題が指摘されている。したがって、将来的には開発地が都市から遠いことなどの制約がつくかもしれない。
※週刊ポスト2012年7月6日号