経済産業省は2001~2018年度で総額477億円の予算を投じて非在来型天然ガスのメタンハイドレートの開発計画を進めているが、そんな海の物とも山の物ともつかない資源開発に過大な期待をして税金を注ぎ込む前に、日本としてはエネルギーの安定調達を図るために他にやるべきことがあると、大前研一氏は指摘する。以下は、大前氏の解説だ。
* * *
日本は、海底の地層中に封じ込められた非在来型天然ガスのメタンハイドレート(メタンガスと水分子が結合してできた氷状の固体物質)の採掘試験を、経済産業省が主体となって今年から開始している。メタンハイドレートは、東部南海トラフなど日本近海200カイリ以内で大量の埋蔵が確認され、貴重な国産エネルギーとして期待を集めている。
だが、水深500メートル以上の海底からさらに数百メートル下の地層中にあり、しかも地中に固体で存在するため単に井戸を掘るだけでは自噴しないので、堆積層でガス化させねばならず、非在来型天然ガスの中で最も採掘が難しいとされている。
コストも、1バレルあたりの原油価格に換算すると150ドルくらいになりそうな状況で、商業生産までの道のりは遠く、まだ本格的に取り組む段階ではない。
経産省は2001~2018年度で総額477億円の予算を投じてメタンハイドレートの開発計画を進めているが、そんな海の物とも山の物ともつかない資源開発に過大な期待をして税金を注ぎ込む前に、日本としてはエネルギーの安定調達を図るために他にやるべきことがある。
優先順位は、まずロシアからパイプラインを敷いて在来型天然ガスを安く確保することだ。次に、同じ非在来型天然ガスでも、すでに実用化されているシェールガス、タイトガス、コールベッドメタン、あるいは非在来型石油のオイルシェールやオイルサンドなどの海外における権益確保に力を入れることだ。メタンハイドレートに関しては、それらが枯渇する160年後に備えて次の世代の人々が考えればよいのである。
※週刊ポスト2012年7月6日号