日本がバブル景気の中にあった時代、『狼たちへの伝言』を上梓して若者を厳しく叱咤激励した落合信彦氏。氏が、現代の若者に、再び喝を入れる。
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若者は社会を映す鏡だ。引きこもりは増え、内向き志向は止まらない。就職先の一番人気は安定の得られる公務員で、転職希望者や留学希望者は減少の一途だという。自分が「安全な柵の中」だと考える範囲から出て行こうとしないのである。
決して彼らに実力がないわけではない。例外的に精一杯生きている者はいるが、多くの者に足りないのは実力ではなく、やる気やエネルギーだ。若さとは大胆さであり、冒険心である。そして、たとえ失敗してももう一度飛び上がれる弾力性だ。それらが何一つ感じられないのが、私は悲しい。
さらに最近では、若者を批判し鼓舞する意見に対し、「開き直り」と取れるような態度や反論が横行している。
例えば、政府によるある調査では、20代の70%以上が現在の生活について「満足している」と回答している。過去40年で最高の数字だというが、日本の現状を考えれば、ブラック・ジョークにしか聞こえない。しかも、それをもって「今の若者は幸福だ」などという主張をし始める輩までいる。日本人として、日本の状況を憂え、力を振り絞って現実を変えようとする気概など、微塵も見えてこない。
私が敬愛するロバート・ケネディはこう言っていた。
「若さとは、精神の問題である」
大胆さや冒険心を失わなければ、年齢を重ねたとしても、本当の意味での若さは失われない。だが、今の日本の若い世代はその逆だ。年齢は重ねていないが、リスクは取りたくない。それどころか、「今のままでいい」「満足している」などと、堂々と開き直る。
※SAPIO2012年7月18日号