日本と韓国には竹島の問題があるが、韓国と中国の間にも領土問題は存在する。韓国に詳しい産経新聞ソウル駐在特別記者・黒田勝弘氏がレポートする。
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韓中間には2つの領土問題がある。1つは南部の済州島沖約150kmにある海中岩礁「離於島」をめぐる争い。もう1つは中朝国境地帯の古代史をめぐる“歴史紛争”だ。
前者は東シナ海での経済水域の取り合いだが、韓国はすでに2003年に海洋基地を設け自己主張してきた。これに対し中国はこの海洋基地の「法的効力」を否定。付近海上での韓国側の作業に中止を要求している。
後者に関しては、韓国は古代国家の高句麗や渤海のルーツを韓民族とし、その支配領域に“郷愁”を抱いてきた。しかし近年、中国は高句麗や渤海の歴史を「中国の地方史」と位置付け、中国支配圏に囲い込みを始めた。最も新しい動きである「万里の長城」の距離延長もそうだ。
最近の発表では長城の距離は東西に倍以上に拡大している。これだと中朝国境地帯や朝鮮半島まで長城の南となり、中国支配圏に組み込まれたも同然である。
両国がこの地域の歴史にこだわるのは、問題が領土紛争含みだからだ。韓国は国境地帯の延辺朝鮮族自治州など「本来は韓民族の領土」と思っている。この地を中国領にした19世紀末、日清戦争後の日本と清の「間島協約」は無効、と今も叫んでいる。
チベットやウイグル、モンゴル族など少数民族問題で頭の痛い中国は、この地に対する韓国の民族的郷愁を極度に警戒している。
ただ韓国は、尖閣問題をめぐる日本の“領土熱気”が韓国つまり竹島問題に向かうことを恐れている。とくにマスコミは石原都知事に対しては「うさんくさい極右煽動政治家」などと終始、全面否定で警戒が強い。
その結果、「独島問題で必要以上に日本の右翼を刺激し、彼らの立場を有利にしてしまうわれわれの行動も注意しなければならない」という論評が出ている(左派系「ハンギョレ新聞」5月11日付)。
珍しく自らの過剰な“独島民族主義”への反省である。これも石原効果か? 韓国では今や「石原―橋下」が日本を動かす最大の関心人物になりつつある。
※SAPIO2012年7月18日号