7月14日に公開される映画『ヘルタースケルター』。その原作者である岡崎京子と桜沢エリカは、30年来の仲だ。同時期にデビュー、1980~1990年代という時代を牽引してきたふたり。が、『ヘルタースケルター』を描いた直後の1996年5月、岡崎は自動車事故にあう。意識不明に陥る大事故で現在もリハビリを続けている──。そんな岡崎について、桜沢が語った。
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夜遊びして、恋バナをして、本当にもういつも電話して、締めきり前に励まし合った仲。1980年代当時は女性コミックはキスまでしか描かない恋愛ものか、レディースコミックかという風で、私たちが初めて女のリアルな性を描いたといわれ、注目されたんです。
『ヘルタースケルター』は当時連載で読んでいましたが、今回、改めて感じたのは原作の普遍性。そして主人公のりりこが、あの木嶋佳苗にそっくりだと。太っていて、風俗で働いていた過去があって…ふたりの違いは容姿を変えるか変えないか。とにかく『ヘルタースケルター』はいまの世の中にリンクしていると感じました。誰もがキレイになりたいという願望を持っていることは17年前もいまも、この先何十年経っても通用しうるテーマだと思います。
岡崎京子という人は、とにかく女の子を描くのが本当に上手で。例えば女の子3人でずうっと語り続けている『くちびるから散弾銃』という作品があるんですけど、それなんかも、もう、『セックス・アンド・ザ・シティ』を先取りした感じというか。女の子のおしゃべり好きっていう、それもまた普遍的なものを道具立てとして使っていて、だからいまでも彼女の作品は古く感じないのかもしれません。
今回『ヘルタースケルター』の試写を京子ちゃんとご家族と一緒に見たんです。彼女が見終わってどういう風な感想を持ったのか、聞くことはできなかったのですが、画面からダイレクトに伝わってくるパワーに“少し疲れた”という感じに見えました。それは私も同じでぐったりしました(笑い)。
ああ、面白かったという爽快感はないけど、やっぱり、あの映画をつくった人たちが込めた思いを一緒に背負っちゃったような感じですかね。あれは軽く呪詛だと思うんです。まず原作の力があり、監督の思い、沢尻さんの思い、出演者とか、いろんな要素が重なってできたのが『ヘルタースケルター』だと思います。そして見る人からもパワーを吸い取ってどんどん作品は強さを増していくのだと思います。
※女性セブン2012年7月26日号