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FXは最終的に儲からない人が多いと行動経済学の第一人者分析

 FX投資のための、パソコン向けやスマホ向けのさまざまな取引ソフトが開発され、個人投資家でも、プロに近いトレード環境を利用できるようになり、FX中毒者まで生み出している。なぜFXはこんなにまで人を惹き付けるのか。

 金融先物取引業協会のまとめでは、国内のFX口座数は2008年3月末の142万口座から2011年12月末には440万口座と、この4年足らずで3倍以上に膨らんでいる。市場への参加者は、右肩上がりで増え続けているのだ。

 電車の中でスマートフォンの画面に釘付けとなってつい下車駅を乗り過ごし、遅刻してしまう人、会社のトイレで取引に夢中になってなかなか出てこない人、仕事に身が入らず、会議中も机の下でこそこそ売買している人などは、あなたの身の回りにもいるのではないか。

 では、なぜFXはこんなにも“中毒性”があるのか。

 まず、世界の為替マーケットは、週末を除けば24時間開かれているため、日中仕事で忙しいサラリーマンを含め、誰でも参加しやすいということが挙げられる。しかも株式市場のように「午後3時で終了」といった区切りがないため、いつまでも取引してしまうという特徴がある。

 だが、「FXが人を惹きつけてやまない理由は、何よりもその商品性にある」と行動経済学の第一人者である真壁昭夫・信州大学経済学部教授は分析する。

「株式投資はある程度、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった指標によって、“理論値”が導き出せますが、為替にはそれがない。実際、ヘッジファンドなどが金融工学によって解析モデルを作ろうとしても、それはことごとく外れています。

 各国の経済情勢とは無関係な値動きもしょっちゅうですし、要は上がるか下がるかを当てる“丁半バクチ”の要素が、株式投資などよりずっと大きい。そもそも人間にはギャンブルしたいという欲求がある。FXが急激に普及した理由も、そこにあるのではないか」

 真壁教授によれば、世界の為替市場の取引規模は1日4兆ドルにも上るという。だが、実際に貿易に用いられるのはわずか数%で、大半の値動きは投機や投資によるものだという。いわば世界中でバクチが行なわれている格好なのだ。

「上がるか下がるかなら、勝率は2分の1であるはずですが、人間は儲かった時の喜びよりも損した時の悲しみが大きいため、どうしても利益確定は早く、損切りは遅くなる。利益が小さくなる反面、損失が拡大する傾向が強いので、最終的には儲からない人が多いのです」(真壁教授)

※SAPIO2012年7月18日号

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