灼熱の東京で17万人が集った反原発デモ。現場を訪れた作家・山下柚実氏の目にはどう映ったか。
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東京はカンカン照りの炎天下。山の手線を降りた時すでに、JR原宿駅は異様な雰囲気。「危険なのでゆっくり進んでください!」と駅員が叫ぶ。階段やエスカレーター、通路など駅の構内に、人が詰まって動かない状態。
やっと改札を出ると、無数の人が流れのように連なり、代々木公園へとなだれ込んでいました。
7月16日、代々木公園「さようなら原発10万人集会」と銘打った集会。作家・大江健三郎氏や瀬戸内寂聴氏、音楽家・坂本龍一氏が「10万人目指して集まろう」と呼びかけた。
現場へ足を運ぶと、見たこともない人の群れ群れ、群れ。午後2時、「目指していた10万人をゆうに超え、17万人が集まっています」というアナウンスが響く。最初は数千人だった首相官邸前の脱原発のアピールが、週ごとに膨らんでいき、あっという間に17万人に。
一つの主張の呼びかけに応えて、17万もの人が集まり行動する。このところの日本では聞いたことの無い出来事です。
見渡すと、政治スローガンを連呼する人からドレッドへア、ロックバンド風、赤ちゃん連れまで、ファッションもスタイルも実にさまざま。家族、若い男女のカップル、一人で来たおばあさんと、年齢層は多岐に亘っていました。
現場に足を運んで、ある現象に気付きました。
中高年男性たちのニコニコした顔、実にいきいきとした表情です。なんだかクラス会、同窓会にむかう時のウキウキ感すら伝わってくる元気ぶり。いろいろな市民や地域グループの旗に混ざって、「明大全共闘」「芝浦工大全共闘」「日大全共闘」などの旗も。1968~1970年代に盛り上がった全共闘運動、その古い友と再会し、懐かしき経験を共有する喜びに溢れている人々の環のように見えました。
世は空前の「同窓会ブーム」です。背景にFacebookやmixiといったデジタルツールがある。昔の友達と再会するチャンスががぜん増えた。しかしもしかしたら、デジタルツールによる再会とはまた別次元で、脱原発デモが「同窓会の火付け役」そのものになっているのかもしれない。
単に顔を合わせて話をするだけの同窓会を超えて、「デモ」という、青春時代に共有した行動をあらためて再体験し心も体も活性化。認知症予防や生き甲斐を提供する、優れた「回想療法」としても、デモが機能しているのかもしれません。
昨今の同窓会は、年々参加者が増えていくのが特徴です。なんと言っても人は「懐かしさ」に強く引き寄せられる動物。加えて、「原発やめよう」という新たな課題が掲げられているのだとすれば……今後も人数が増殖していくことはあっても、減ることはなさそうです。
野田首相は気付いているでしょうか?
「時間が過ぎれば人数も減る」「熱しやすく冷めやすい」などとタカを括って脱原発の声を「騒音」だと思っていると、足下を揺るがされかねないことを。