消費増税に反対して民主党を飛び出した小沢新党「国民の生活が第一」だが、衆院37人、参院12人の計49人の勢力にすぎない。今回ばかりは小沢はダメだろう――そんな空気がいまの永田町には充満している。
実は、首相官邸では、「小沢を切れば支持率は最低でも4ポイントは上がる」(総理補佐官の1人)と分析していた。ところが、野田内閣の支持率は過去最低の21.3%を付け、民主党の政党支持率も6.7%まで落ち込んだ(時事通信)。国民から見れば、大増税や原発再稼働に突き進んできた野田内閣が支持を失うのは当然だが、本人たちは「小沢を切っても支持が上向かないのはなぜだ」という、言いしれぬ不安と焦りを感じているのである。
増税連合を組む自民党の長老議員は官邸以上に警戒している。
「われわれは小沢に何度も煮え湯を飲まされてきた。政権に小沢を除名させるように仕向けたのは、小沢の選挙ノウハウと民主党の豊富な選挙資金を切り離すのも狙いだったが、野に放たれた小沢が次に何を仕掛けてくるか油断はできない」
対照的なのが小沢氏の言動だ。小沢氏が新党結成を最終的に決意したのは、民主党執行部が両院議員懇談会を開いた翌日の6月21日とされる。まだ法案の衆院採決前だった。
この日、増税反対派が拠点を置く都内のホテルに集まったグループ議員を前に小沢氏はこう語った。
「選挙になれば、オリーブの木で圧勝する」
議員たちは、小沢氏がすでに新党結成や選挙戦略まで視野に入れていることと、「圧勝する」という言葉の強さに驚いたという。
選挙への自信は、地元・岩手にも伝わっている。小沢氏は離党前の7月1日、岩手入りして達増拓也・知事や県議らと会談した。その時の様子を佐々木順一・岩手県議が語る。
「先生は『近く選挙はある。絶対勝つよ』と話してくれた。あんなに自信に満ちた先生を見たことがない」
そうした発言を「根拠のない強がり」と片付けるのは簡単な話だが、自民党離党以来、小沢氏と行動をともにして「知恵袋」と呼ばれた平野貞夫・元参院議員の話は興味深い。
「小沢が選挙に強いのは、国民の意識の変化についての分析が正確だからです。東日本大震災後、小沢はこの震災が必ず日本のありようを変えるという問題意識を持った。明治維新の13年前にも安政の大地震が起き、江戸幕府の崩壊につながった。だから輿石(東・民主党)幹事長には、時間をかけて『消費税増税を棚上げして、震災復興を機に日本の資本主義社会のあり方を見直すべきだ』と説得してきたわけです。
しかし、説得は失敗した。野田総理は一層、原発再稼働と消費税増税に走ったが、小沢は官邸への反原発デモの広がりに注目し、そこから国民の意識を読み取ろうとした。あれは再稼働反対だけではなく、増税反対、国民の倒閣運動だと。そこで反原発と増税反対勢力を結集する政界再編を構想した」
※週刊ポスト2012年8月3日号