大飯原発は再稼働されたが、節電の根拠となった需給予測そのものの嘘が露呈した。関西電力は7月前半の最大電力需要を2757万kWとしていた。しかし実際は10日の2211万kWが最大で、ほとんどの日の最大電力は2100万kW以下だ。想定需要を観測史上最大の猛暑である2010年を基準にし、あらかじめ不当に高く見積もられていたためである。
そして、需要を大きく見積もるのと同時に、供給力を過少に申告していたことも見逃せない。
関電は今夏の電力供給力を2517万kW(5月19日発表)としていた。しかし、7月6日に発表された7月3週目(17~20日)の需給見通しでは、こっそり2744万kWにまで上昇しているのである。しかもこの2744万kWには大飯原発再稼働による供給力の増加は含まれていない。それでも大幅に供給力がアップした理由は、揚水発電(※注)が従来の221万kWから406万kWと大幅に上方修正されたことが大きい。
これまで『週刊ポスト』が報じてきたとおり、関電の揚水発電能力は最大で488万kWある。事実、昨年の7月11日~8月19日には毎日450万~465万kWを揚水発電で供給していた。しかし関電は「原発で電力に余裕がない」と説明し、これまでの半分程度の供給力しか見込んでいなかったのである。これは露骨な「電力隠し」だ。
現在も関電は、「10%節電」の根拠となる最大供給力を試算する際、8月の揚水発電能力を低めに見積もっている。従来からの223万kWに大飯原発3号機による揚水発電の増加分53万kWを足した276万kWのみだ。元々設定されていた15%節電も眉唾なら、5%という軽減幅すらも疑わしい。
その疑わしさは節電目標が5%から4%となった中部電力と北陸電力、5%から3%となった中国電力も同様だ。
各電力会社に尋ねても、「節電目標は政府が作成したもので当社は携わっていない」(中部電力広報部)
「5%から4%への改定は国からも知らされていないし理由もわからない」(北陸電力地域広報部)
などと、電力会社すらその根拠を把握していないほどである。
資源エネルギー庁は「中西日本全体で、関西電力の電力予備率3%を確保するという観点で数字を見直した」(電力基盤整備課)というが、下げ幅が妥当かどうかについては明確な答えが得られなかった。
【※注】揚水発電/夜間など電力需要の少ない時間帯の余剰電力を使用し下部貯水池から上部貯水池へ水を汲み上げ、電力需要が大きくなる時間帯に水を導き落とす水力発電方式。
※週刊ポスト2012年8月3日号