国境なき記者団――。フランスに本部を置く同団体は、言論の自由の擁護を目的としたジャーナリストによる非政府組織である。世界中で拘束されたジャーナリストの救出や各国のメディア規制への監視、警告を主な活動としている彼らが、今、「最大の敵」として挙げているのが中国だ。苛烈極める中国国内の言論統制の実態を、国境なき記者団アジア太平洋デスク、ベンジャミン・イシュマル氏が報告する。
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中国では、この3年間でネットユーザーの数が急増、ブログ、マイクロブログ(微博=ツイッターとフェイスブックの要素を併せ持つミニブログ)のブームとなっている。
現在、中国のネットユーザーは5億1300万人といわれる。ネット普及率は全人口の38.3%。ネットユーザーのうち約半数の2億5000万人がそれぞれのブログを持ち、3億5600万人が携帯からのアクセスと見積もられている。
意見を共有したり、ニュースの流通を促すブログ、マイクロブログの急速な普及は、当局を慌てさせ、新たな対策を導入せざるを得なくした。
中国警察当局は、中国語のマイクロブログに対して「社会に悪影響を及ぼしている」と非難。中国の4大ネット媒体のうち3社、新浪公司(新浪微博の所有企業)、百度(サーチエンジン)、謄訊(QQメッセージングサービス)は、2011年11月、政府の指示に従いネット監視を実行することに同意した。
これらソーシャルネットワークを立ち上げた企業は政府や権力と近い関係にあるため、誰ひとりとして“情報の自由化”を促進しようとは考えていない。
とりわけ、中国で一番人気のある新浪微博は、当局が“不法な活動”を防止するための媒体として利用されている。新浪微博は2009年8月にソーシャル・ブログサイトとして発足。現在の投稿者数は3億人以上とされる。
去る7月2日、四川省の西南部に位置するシーファン市で化学工場建設に反対する住民2万人のデモが発生した。新浪微博への携帯からのアクセスでデモの呼びかけを知った2万人の住民が集結したのだ。
翌日、地元警察当局は新浪微博の書き込みに“不法な活動”を続行しないように呼びかけた。
「条例により、インターネット、携帯電話、もしくは他の媒体ツールを使って不法な集会を誘発、計画、組織する者は直ちに不法行為を中止し、このような影響を波及させるのを止めなければならない。さもなければ、いったん事実が判明した場合、それらのものは法律に従い処置されるだろう」
また一般のネットユーザーには以下のような書き込みで警告を発している。
「“虚偽の噂”を拡散しないように命令する。そして指示に従わない者は罰せられる」
このような警察の書き込みは、インターネットや他のコミュニケーションツールが民衆の不満を伝播させやすく、デモを過熱させるということを当局が十分に認識し、不安になっていることの表われであろう。
取材■瀬川牧子(ジャーナリスト)
※SAPIO2012年8月1・8日号