昨年の震災の反動もあり、今年はビール業界が元気だ。キリンビールが“泡が凍った”「フローズン」など“新しいビールの飲み方”を提案してきているほか、黒ビールも各社好調。アサヒビールの「アサヒスーパードライ」初の派生商品「アサヒスーパードライ ドライブラック」は年間販売目標を当初の200万ケースから6月時点で300万ケースに上方修正したほか、サッポロビールも「麦とホップ〈黒〉」の年内販売目標を、発売時の150万ケースから300万ケースに。
そのなかで“新しいビールの飲み方”を提案するべく、3年前から「エクストラコールドBAR」を運営してきたのがアサヒビール。「エクストラコールド」とは、0度からマイナス2度という“氷点下”まで冷やすことで、すっきりと飲みやすいビールを実現したものだ。今年はそのBARで黒ビールも提供を開始し、ますます波に乗るエクストラコールドBAR銀座店 店長・加藤さんに話を聞いた。
16時から18時までは「2杯まで」と限定の“1 DRINK TIME”。より手軽に、より多くのお客様に楽しんでいただくため。去年から行なっているが、好評で一日に120人から150人が来店するという。
――客層は?
「銀座という土地柄、買い物帰りの女性がよくいらっしゃいますね。カフェに立ち寄るような感覚で、おいしいものを1杯、ちょっと喉を潤して…という。
外国の方もよくみえます。よく、キンキンに冷やすのは日本人だけといわれますが、飲んでみると外国の方にも人気です。湿度の高い日本では、まずはスッキリと飲み口のいいものが好まれるのではないでしょうか」
――3年前からの変化は?
「女性が多くなりました。ビールを飲めなかった人が、飲めるようになったという声をよくききます。『苦くないんだ!』と。“ビール女子”が増えている印象はあります。
今は男性6割、女性4割くらいですね。これから夏本番だと、セール帰りのママ同士が飲んで帰るといった方が増えてきます。
お一人の女性も多いです。一日に10人以上はいらっしゃいますね」
――若者のビール離れ、ともよく耳にしますが…
「いえ、若者はむしろ増えています。夏休みになると、大学生もいますね。ひとつの“アトラクション”という形で楽しみながら飲んでいるようです。
普段話さないような先輩や上司と居酒屋に行って、腰を落ち着けてじっくりという時代でもなく、さくっと飲んでさっと帰ろうというような“飲みスタイル”に(エクストラコールドBARが)合っているのだと思います。酒を飲むスタイルそのものが変わってきている。若者がビールを飲まなくなったのではなくて、どうせ飲むのであれば好きな人とおいしいものを楽しむ、という“楽しみ方”が変化してきているのかなと。
付き合いではなくて、スタイリッシュな感じで飲みたい、という意識はうかがえます」
――今年はドライブラックが出ましたが。
「ドライブラックの特長であるコクとキレをエクストラコールドで楽しんでいただくために、エクストラコールドBAR限定で先行してご提供しています」
記者も飲んでみたが、旨味、香りが違う。甘味さえ感じ、満足できる。ビールにキレだけでなく“旨味”を求める時代、エクストラコールドBARで提供する「ドライブラック」は、本当に“うまい”。スタイリッシュな店舗の外観は高級感を醸し出すが、ビールは1杯550円。
「お一人の方にも入ってもらいやすいよう、スタッフもお客様と、積極的にコミュニケーションをとっています。いいものをスタイリッシュに一人で、そして適量を楽しむという時代に、エクストラコールドBARは合っているのかもしれませんね」という加藤さん。ちなみに、人気のおつまみメニューは「じゃこのピザ」とのこと。アヒージョやコンフィなど、ワインにも合いそうなメニューが並ぶのは、「新しい提案」を追求した結果で、ビールを飲む新しいスタイルへの挑戦はまだまだ続く。