ファミコン時代から固定ファンも多いロールプレイングゲーム(RPG)の代表格、『ドラゴンクエストX(10)目覚めし五つの種族 オンライン』(スクウェア・エニックス)がいよいよ8月2日に発売される。
タイトルを見てお気づきだろうが、今作品はソフト代の6980円を支払い、対応ゲーム機の任天堂『Wii』に挿入するだけでは1日数時間しか遊べない。続きを堪能するにはインターネットの接続環境を整えたうえで、月額1000円の利用料が必要になる。つまり、他人と交流しながら遊ぶオンラインゲームの要素が強くなったのだ。
任天堂はユーザーの利用料も嵩むオンライン路線になぜ変更したのか。
「これまで任天堂は、グリーやDeNAが携帯向けソーシャルゲームで射幸心を煽る『アイテム課金』をして問題になった、いわゆる“コンプガチャ”のような課金ビジネスには否定的でした。岩田聡社長も『一時的に収益が得られても、お客様との関係は長続きしない』と話していましたしね。
でも、携帯ゲームの爆発的な普及に押され、据え置き型の家庭用ゲーム機は不振の一途。それが1981年以来の赤字転落という決算で露呈し、もはや課金による収益を考えざるを得ない状況になったのです」(国内証券アナリスト)
ドラクエとともにRPGの盛隆を極めた『FF(ファイナルファンタジー)』シリーズの一部の作品も、既に定額課金のオンラインゲームとして認知されてはいるが、「オンライン会員数はピークの50万人から、いまは30万人程度に落ち込んでいる」(前出のアナリスト)と、決して成功しているとはいえない状況だ。
大手ソフトメーカーの社員は、こう推察する。
「巨大プラットフォームの任天堂が課金ビジネスに積極的に進出することによって、今後、ゲーム業界全体の“拝金主義”は止まらなくなる。もちろん、任天堂は高額アイテムを買わなければ次のステージに進めないような無茶な課金システムは採らないでしょう。あくまでメインターゲットの子供の懐をキズつけないよう、十分な対策をとるはずですが」
その言葉通り、ドラクエの新作には子供が無料で遊べる「キッズタイム」が設けられている。しかし、ゲーム業界全体の闇は深い――と、前出のアナリストは手厳しい。
「コンプガチャが怖いと思っている消費者は、グリーやDeNAだけでなく、携帯ゲームを提供しているコナミやバンダイナムコ、スクウェア・エニックスも含まれるソフトメーカー全般を怖いと思っている。ひいては、そうしたメーカーのゲームを提供している任天堂やソニーのオンラインゲームそのものに警戒感を持っているのです。
今後、ゲーム業界は課金ビジネスの基準を設けるだけでなく、ゲームの質とそれにともなう“適正価格”をいまいちど見直す必要があるでしょうね」