現在大阪府・市の特別顧問に就任し、バカ規制に切り込んでいる制作工房社長の原英史氏は、役所などによるがんじがらめの規制が、民間のビジネスを邪魔する事例を常に指摘してきた。一方、原発行政の問題に目を転じると、政治家や役所が“明文化されていない決まり”を勝手につくり、いわば超法規的措置を乱発してきた姿が浮かび上がる。以下、原氏の解説だ。
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大阪府市は4月、政府に大飯再稼働に関する「8つの提案」を行なっている。その筆頭が、「国民が信頼できる規制機関として三条委員会の規制庁を設立すること」だった。
「三条委員会」とは、国家行政組織法3条に基づく委員会という意味合いで、公正取引委員会など、内閣から一定の独立性を有する機関だ。
「内閣から独立」が大事なのは、政治の思惑と安全規制を切り離すため。独立性がないと、例えばの話、「原発推進」の政権が成立すれば、政権の意向に沿って安全基準を緩め原発を運用しやすくする、といったことが起きかねない。三条委員会なら委員の人事は国会同意人事で、任期中に解任されることは基本的にない。人事面での独立性を担保すれば、科学的な判断で安全を守るルールづくりが可能になる。
しかし、政府が1月末に提出した法案では、三条委員会ではなく、環境省の外局として「原子力規制庁」を設置することになっていた。それでは従来通り原発推進ありきの役所のコントロール下に置かれかねない。これに対し、自民党・公明党は対案を提示。
大阪の提案が影響を与えたかはともかく、その後の与野党修正協議の結果、三条委員会の「原子力規制委員会」を設置する自公案に沿って合意。6月に法案成立に至った。
問題は、その委員会のメンバーだ。
日本の原子力専門家の多くは、電力会社との何らかのつながりを持ち、中立性に欠けるとも言われる。そこで外国人の起用は検討すべき課題だ。橋下市長も法案成立前、こうした発言をしていた。
成立した法律では、外国人起用について規定はあるものの、「第三者として意見を述べる職」(参与など)のポストだけを想定。明文で外国人の委員起用ができないとは書いていないが、法案提出者は、「公務員ということになれば当然決まりがあるわけでございまして、外国人はその(委員の)任に当たることができません」との見解を明らかにした(6月15日衆議院環境委員会)。
だが、本当に外国人は委員になれないという「決まり」はあるのか。
法令上、外国人の起用を制限する明文規定があるのは、外交官(外務公務員法7条)、公選の公務員(公職選挙法10条)などに限られ、一般の公務員について規定はない。
ただ、内閣法制局が1953年に示したいわゆる「当然の法理」でこう言われていた。
「法の明文の規定が存在するわけではないが、公務員に関する当然の法理として、公権力の行使または国家意思の形成への参画にたずさわる公務員となるためには、日本国籍を必要とするものと解すべきである」
これが長らく「決まり」と認識されてきたわけで、ここにも“人治主義”が潜んでいた。これは所詮、内閣法制局の当時の解釈。国民の安全を守るために外国人起用が望ましいと判断される局面で、半世紀以上前の解釈にとらわれ続ける必要があるのだろうか。
※SAPIO2012年8月18日号