ロンドン五輪ではメダルを目指してアスリートたちの激しい競技が続いているが、つい4年前に五輪が華々しく開催された北京のオリンピック競技会場はほとんど使われておらず、「いまや廃墟と化している」とネット上で話題になっている。
2008年開催の北京五輪会場の惨状を白日の下にさらしたのは、ロイター通信社のカメラマン、ディビッド・グレー氏。鉄柵によって取り囲まれて、ほとんど使用されていないまま壁が崩れ落ちているバレーボール会場の体育館や、草ぼうぼうで、いまや野良犬の遊び場になってしまった野球会場、水がまったく乾いたままで放置されているカヤック会場、もはや塀すら取り壊されたままで残骸をさらしているカヌー競技場などの現状が明らかになったのだ。
とくに、奇抜な設計で話題になったメインスタジアムの「鳥の巣」競技場や競泳会場の「水立方」は五輪後ほとんど使われておらず、全くの廃墟となり、五輪会場周辺はまさにゴーストタウンと化してしまったかと見間違うばかりだ。
グレー氏が撮影した写真と記事は米誌「アトランティック(AtlAntic)」に掲載され、同誌電子版(7月6日付)には、かつての栄光がウソのような寒々しい北京五輪会場の現在を撮影した15枚の写真が公表された。
同誌の記事に続いて、米紙「ニューヨーク・タイムズ」も北京五輪会場の現状をレポートした。
それによると、「鳥の巣」競技場は建設に4億7100万ドル(約337億円)がかかっており、この費用を払い終わるまで30年かかる上、9万1000席ある鳥の巣の昨年の維持費は100万ドル(約8000万円)だったと報じた。
通常ならば、五輪会場は1964年の東京五輪のメイン会場だった国立運動会場のように再利用されるのだが、この鳥の巣は五輪後、香港の映画俳優のジャッキー・チェンがコンサートを開いたり、サッカーの国際試合やオペラなどを開催したものの、結局数えるほどしか利用されていないと同紙は伝えている。
それでも、維持・管理されているのはまだましで、野球場やバレー、カヤック、カヌーの競技会場はまったく手入れされておらず、荒れ放題のままだ。
このような惨状の原因は五輪会場が北京市中心部から15キロ以上も離れた郊外にあることで、住宅地からも離れており、北京市民も利用できないためだ。
これらの五輪施設は、建設計画段階でも五輪後の再利用についてはまったく考慮しなかったことから、オリンピックが終わってしまったいま、だれにも見向きもされない遺物となってしまったといえそうだ。