震災から1年半が経とうとしているのに、いまだに国の新たなエネルギー政策はまとまっていない。政府の中長期エネルギー政策では原発依存率の割合をどうするかの議論が行なわれているが、現状の原発の運用・管理体制についての議論は深まっていない。これについて元原子炉設計者でもある大前研一氏が提言する。
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原発は国営または公営しかない。もはや原発を個々の電力会社が運営していくことは不可能だ。これまで国策として原子力を推進してきた以上、今後すべての原発は電力会社が資産と人材を持ち寄って会社を作って運営すべきである。
皮肉を込めていえば、国営化した東電が全原子炉を買い取ってもよいし、すでに東海などを運営している日本原電を中核にしてもよい。核燃料サイクルを行なっている国策会社の日本原燃もこれに併せ、廃炉を担う会社をここに付けてもよい。
原発再稼働には反対も多い。しかし、私自身が最新著の『原発再稼働「最後の条件」』(小学館刊)で検証したように、福島第一原発事故の悲劇が教えてくれた貴重な教訓から、安全な原子炉に作り変えることは十分可能だ。
さらに最近アメリカで30年ぶりに認可された原子炉などは「何があっても冷却できる」設計となっており、10年もすれば世界的にかなり普及していると思われる。原発依存度は、そうした動きを見ながら向こう15年くらいかけて決めていけばよいのである。
※週刊ポスト2012年8月17・24日号