数十億円もするきらびやかなダイヤモンドやルビーを、これでもかとばかり身につけてテレビなどに出演し、“歩く100億円”の異名を持つのは、名古屋のレストランチェーン『よし川』の代表取締役社長、吉川幸枝さん(76才)。
「グロも極めれば、すごい。おもしろい。だから、皆さんに親しんでいただける。普段はつけないわよ。あくまでも商売上の見せびらかし用」
とは本人の弁。完全に“確信犯”なのだ。名古屋のレストラン集合施設『よし川ビレッジ』をはじめ、国内とアメリカでレストランを経営。計7つの会社のオーナーで、「私個人の年収は億単位」というまさに大富豪だが、「ゴージャスに生きてますけど、ぜいたくはしていないんですよ」と意外なひと言。
「ぜいたくとは時間を無駄にすること。私は人が10年かかることをどうやって1年でやろうかと考えて、それを実践する。たとえば、家での料理はいまも私が手作りしていますが、普通なら1時間かかる料理をぱぱぱっと5分くらいで作っちゃう。仕事も一緒なんですよ」(吉川さん)
76才を過ぎたいまも、将来自分が90才になったころの事業経営を頭に描き、人の何倍ものスピードでその夢に向かって動き、知恵を絞る。
だが、そんな吉川さんもホームレス同然だった過去がある。吉川さんは日中戦争が起こる2年前の1935年に13人きょうだいの末っ子に生まれ、5才のときに父を亡くした。自宅の賃料が払えずに追い出され、母とリヤカーを引いて名古屋の町をさまよい歩いたという。
「わずかなお金でどうやって1か月を生き抜くか、そんなことをずっと考えて生活してきた。極貧が商売の原点にもあります」と吉川さんはいう。
「いまの若い人たちは、たとえば夫婦2人で月20万円ずつ稼いでいたら、月40万円の生活をする。そうではなく、そのうちの月10万円でいかに生活するかを工夫し、残りは将来の大きなチャレンジのために貯金に回すのが大事。地道な努力が成功につながるんです」(吉川さん)
※女性セブン2012年8月23・30日号