「こいつは在日確定」「テレビ局の御用」……。何か事件があるたびにネット上に登場し、四六時中、掲示板へ書き込みを続け、何でもかんでも「韓国の陰謀」に結びつけて騒ぐネット右翼(ネトウヨ)。彼らは一体何がしたいのか。『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)の著者・中川淳一郎氏と、ネット黎明期からウェブ社会をつぶさに見てきた人気ブロガー、山本一郎氏というネットウォッチャー2人が、ネトウヨについて語り合った。
中川:ここ数年、ネトウヨ関連の事件が頻発していますが、やはり強烈に印象に残っているのは昨年のフジテレビデモですね。
山本:あれはネトウヨの思考パターンを象徴する出来事でした。
中川:そう。まずは「フジテレビは過度に韓国コンテンツを流している」とネトウヨの間で問題になって、「フジテレビは、在日コリアンないしは韓国に支配されている」という論調が2ちゃんねるなどで巻き起こった。
そうなると、次々と書き込みが行なわれて、「笑っていいとも!」で女性を対象に行なわれた「好きな鍋料理」アンケートで、20代から60代まですべての層で「キムチ鍋」が1位になったとか、フジテレビの夏のイベント「お台場合衆国」の人気メニューの1位が「冷やし韓国(冷麺)」だったとか、本当にどうしようもない、くだらないネタが韓国支配の“証拠”として積み上げられた。確証バイアス(結論ありきで都合のいい情報ばかり集め、思い込みを補強する現象)がエスカレートして、結局最後はデモにまで発展しました。
フジテレビは「韓国コンテンツが安い」という経済的合理性で動いているだけなんですけどね。以前、朝日新聞の取材を受けた時にそうコメントして、「暇な韓国嫌いな人に見える」とコメントしたら、今度は「中川淳一郎は在日韓国人に認定」だそうです。その時、山本さんと出演する予定だったイベントに爆破予告がありましたね。
山本:フジテレビデモを仕掛けた連中の一部は、その前にはチェ・ジウをドラマの主役に使ったTBSや、キム・テヒをCMに起用したロート製薬にも「反日韓国人女優を使うな」と抗議していました。それをネットで公開すると他のネトウヨたちが拍手喝采を送る。でも実際は、所属事務所の社長がやや反日的な政治姿勢の人というだけで、チェ・ジウは直接関係ないんですが、韓国人タレントを使うことイコール日本人を馬鹿にしているという、短絡化された思考回路がありますね。
※SAPIO2012年8月22・29日号