展示された女性器の石膏模型の数は571人分、今年5月~6月、ロンドンで開かれた展覧会『The Great Wall of Vagina』(直訳すれば「女性器の偉大なる壁」)は大反響を呼び、異例の延長までされた。この展覧会の主催者で制作者であるジェイミー・マッカートニー氏に話を聞いた。
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ここに展示した女性器の石膏模型は5年がかりで集めたものなんだ。きっかけは、2006年に男性と女性の性器や、女性の胸を模型にして展示したこと。その時、女性たちが自分の性器に興味津々で、喜んだり、興奮したりしていた。その様子に本当に驚いたんだよ。
女性は男性と違って自分の性器を見る機会が少ないから、実は自分の性器のことをもっとよく知りたいんじゃないかと思ったし、もっと知ってもらいたいとも思った。
女性器は本当に十人十色、千差万別で“普通”なんてない。それなのに女性の多くは、ポルノ映画などを見て“自分の性器は普通じゃない”なんて思い込んでいる。自分の性器にコンプレックスを持ってしまって、クリトリスや小陰唇の切除手術を受ける女性も多い。
でも、僕の作品を見れば、そんな必要はないとわかるし、ありのままで美しいとわかるはず。だから、この展示会を見て、1人でも性器の美容整形手術に行かなくなったら成功だと思っているんだ。
女性器の模型を集め始めた頃は、“女性器を弄びたいだけだろ”なんて揶揄されたこともあった。でも、実際には女性たちのほうからどんどん集まってきてくれたんだ。2~3年目になると、毎日のように「私も作品にしてほしい」と僕のアトリエを訪ねてきたよ。今回の展覧会に出している18~76歳までの571人分の女性器は皆、ボランティアによるものだ。
イギリスはもちろん、オーストラリアやスイス、カナダ、ドイツ、イタリア、アメリカ……日本の女性も入ってるよ。彼女たちは旅行中にこうしたプロジェクトを知って応募してきてくれたんだ。
型をとる時は、アトリエにあるテーブルに下半身裸で寝そべってもらい、股間に特殊な青いドロドロした液体を流し込む。すると1分くらいで固まってゴム状になるから、そっと剥がして、そこから石膏で型をとる。剥がしたばかりのゴム状の型を女性に見せると、みんな大喜びしていたね。
作品には国籍や年齢は表示していないけど、この作品を作ってみて、肌の色や国籍による違いはないということがわかった。今後は他の都市でもこの展示会を開きたいし、日本でもお呼びがかかれば、ぜひ開催したいと思ってるよ。
【プロフィール】
ジェイミー・マッカートニー/1971年生まれ。米コネティカット州のハートフォード・アートスクール卒業。英国ブライトン在住。メタル彫造や小道具製作を中心に活動し、2006年公開の映画『007カジノ・ロワイヤル』の小道具も手がけた。2007年には作品『スパイス・オブ・ライフ』で国際彫刻賞を受賞。
※週刊ポスト2012年8月17・24日号