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ネット右翼は社会性ないため実社会であり得ぬ陰謀論を信じる

 何か事件があるたびにネット上に登場し、四六時中、掲示板へ書き込みを続け、何でもかんでも「韓国の陰謀」に結びつけて騒ぐネット右翼(ネトウヨ)。彼らは一体何がしたいのか。『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)の著者、中川淳一郎氏とネット黎明期からウェブ社会をつぶさに見てきた人気ブロガー、山本一郎氏が、ネトウヨの実態を検証する。

中川:ネトウヨの引き起こした事件でおかしかったのが、オーストリアの教科書で日本海の表記が「東海」になることが決まったとかで、ネトウヨはオーストラリアと勘違いして、オージービーフの不買運動を呼びかけた。

 もともとオーストラリアもシーシェパード(反捕鯨団体)の影響で、ネトウヨにとっては「嫌いな国」のひとつに入っているんですがね。ちゃんとニュース読めよって話ですよ。彼らに言わせるとネットの情報はフェアで、既存メディアはアンフェア、偏っているということらしいですが、ネットの情報なんてソースのほとんどが新聞社とか通信社の記事だっていうことも知らない。

山本:ネトウヨがよく使う「マスコミはなぜ報じない!」っていうフレーズがあるけれど、ほとんどの場合、報じているんですよね。単に彼らが新聞を読んでいないだけ。そして、ネトウヨに共通するのがコミュニケーション能力の低さです。社会性がないため、実社会ではありえない陰謀論に簡単にひっかかる。

中川:陰謀論大好きですよね。特に「電通」はよくやり玉にあがる。広告代理店なんて、クライアントの顔色窺うので精一杯で、陰謀なんて仕掛けられるはずがないのに。

山本:だいたい、陰謀というのはペラペラ話してはいけないものです。私は何人も広告代理店の人を知っていますが、皆「あの仕事は俺がやった」とかまあよくしゃべりますよ。実社会での経験があれば、そんなふうに、陰謀なんてないと判断できるんですが、彼らにはそれがない。

 一方で、中国人の女優が日本蔑視発言をしてもネトウヨはそこまで騒がない。韓国相手じゃないと盛り上がらないのが彼らの特徴で、基本的に反韓が中心なんですね。

中川:確かに。レディー・ガガやジョニー・デップが来日してテレビがかなりの放送時間を割いても、ネトウヨは「テレビ局がアメリカに支配されている」とは絶対に言わない。それが韓国となると俄然やる気になる。

 情報発信という面では韓国への暴言が連発されるし、情報収集の面では、“韓国は日本に劣っている”というデータ、記事を必死に集めますね。ちなみに私が編集者として関わっているニュースサイト「NEWSポストセブン」で「男性器、日本人は13センチで韓国人は9.6センチ」という記事を載せた時は、アクセス数が爆発的に伸びた。

山本:一方で、ネトウヨはなぜか台湾をやたらと褒めますよね。タイも好きでしょう。あとトルコ。これらはいずれも親日国家だからでしょうね。

中川:反日国家でも、北朝鮮はむしろ同情されていますよ。

山本:それは金正男(まさお)先生のおかげですよ。

中川:入管で止められたときに、「ディズニーランドに行きたかった」と言ったからね。あの事件以来、ネトウヨの間では“まさおリスペクト”なるものがある。でも要はネタにしているだけなんですが。

山本『となりのトトロ』のTシャツ姿で撮られたこともある。一国の“皇子”なのにね。

中川:たった1枚の写真の印象でネット世論は変わる。北朝鮮が韓国のようにネトウヨから叩かれないのはすべて、「まさお先生」と絶叫アナウンサーのおかげです。ネタにされている北朝鮮はともかく、ネトウヨが中国に対しては比較的あっさりしていて、韓国だけを叩く理由は多分、近親憎悪なんでしょうね。日本にとって、どこが一番近い国かというと、やっぱり韓国ですから。

※SAPIO2012年8月22・29日号

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