「姉は同居を拒むだろうか?」
「姉にもメリットはある。僕らのローンで新築に住める。将来的な両親のサポートを協力し合える」
これらは、旭化成リフォームが『ヘーベルハウス 2.5世帯ものがたり』と題して全国紙の一面広告で打ち出している新しい暮らし方提案である。親夫婦、子供夫婦の二世帯に加え、独身で親元に身を寄せる子供の兄弟姉妹、いわゆる“パラサイトシングル”(親に依存する未婚者)をも取り込む「2.5世帯分」の建て替えを推奨しているのだ。
食事や入浴以外の日常生活を自立して送れる専用部屋、独立した場合は親子世帯が空き室を活用できる間取り――と単身家族に配慮したつくりにはなっているが、果たしてこの新しい2.5世帯住宅のライフスタイルは定着するのか。
ニッセイ基礎研究所・生活研究部門研究員の久我尚子氏が、急増するパラサイトシングルの現状について分析する。
「生涯未婚率(50歳時点での未婚率平均)は男性で2割、女性でも1割を超えていて、その割合は右肩上がりになっています。また、われわれの調査では、男性よりも女性が親や配偶者などの家族に頼ることへの抵抗感が薄く、むしろ安心感が高まり経済的余裕を感じていることが分かりました」
総務省統計研修所の推計では、35~44歳の6人に1人、約300万人もが未婚のまま親と同居していることが判明した。しかし、パラサイトシングルのすべてが親との同居に「ゆとり」を感じているわけではない。
「かつてパラサイトシングルといえば、基本的な生活条件は親に寄生し、自分の可処分所得は好きに使える優雅な独身層として揶揄されてきましたが、いまは非正規雇用者も多く、所得は減る一方。特に男性は将来的な不安を抱えながら、仕方なく親と同居している人が多いのです」(前出・久我氏)
都内の食品メーカーに勤めるA氏(43歳・4人家族)は、溜息混じりに話す。
「たまたま実家のある愛知への転勤が決まったので、それを機に親の家を二世帯住宅にして一緒に住もうと思っているのですが、なにせ実家には定職に就かない独身の弟がいて……。まさか『オレたちが住むから早く結婚して出ていけ!』なんて言えませんしね」
前出・久我氏は同居家族が増えることによるメリットも挙げるが、パラサイトシングルにとっては、居心地の悪さに拍車をかけかねない。
「最近は共働き夫婦が増えているので、同居する単身者に子育てを手伝ってもらえるかもしれませんし、細々したプレゼントを含めて子供の教育費に出るお金の“ポケット”が増えると喜ばれるケースもあるでしょうね。でも、2.5世帯住宅のライフスタイル実現には、パラサイトシングルへの“気遣い”が大切でしょうね」