週刊ポストは橋下徹・大阪市長率いる大阪維新の会の「維新塾」888名の名簿を入手、前号で公開した。
リストを見て驚くのは、“維新候補”が山形と高知、宮崎を除く44都道府県に散らばっていることだ。選挙区にして300小選挙区中、215区。地域政党という性格上、関西圏に約半数の塾生が集中しているが、それでも維新への参加者が全国的な広がりを持っていることは注目に値する。
また、選挙を知る“即戦力候補者”といえる地方議員や議員秘書が100人以上いることも既成政党にとっては脅威だろう。
その中には、自民・松浪健太代議士の従兄にあたる松浪武久・泉佐野市議や、消費増税の閣議決定に抗議して今年4月に民主党を離党した木内孝胤・代議士の秘書・荒木田聡氏など、維新への“移籍予備軍”と目される現職代議士の関係者もいる。
荒木田氏は本誌取材に応じる姿勢を見せたものの、木内氏の“維新移籍”が報じられると、「代議士と相談しなければならない」と口をつぐんだ。それが逆に「橋下政局」の緊迫感を漂わせている。国会議員秘書経験のある維新塾生のひとりは、
「すでに維新政治塾からは“出馬するか、しないか”“出るならば国政か、地方選か”と訊かれています。私ですか? もちろん出馬する意思はあります。民主にも自民にも有権者は愛想を尽かしているから勝てる自信はある」
と、出馬意欲と既成政党への不信を露わにした。
すでに地元浸透を進めている“候補”もいる。住所は兵庫2区内だが、みんなの党の兵庫6区支部長を務め、維新塾にも参加する杉田水脈氏はこういう。
「駅前での辻立ちでは自民党の支部長(候補内定者)によく遭遇しますね。出馬はみんなの党からになりますが、塾生でもあり、維新の会とは共通点が多いので(維新との統一候補として)やっていけると思います。選挙後は維新が中心となって政界再編が起こることを期待しています」
迎え撃つ民主現職は危機感を募らせる。
メディアの情勢調査で「維新優勢」が伝えられる大阪7区の現職は、野田内閣の要である藤村修・官房長官だ。地元後援会に詰める秘書は、「他党さんは意識していない。粛々と活動を続けていくだけ」と応じたが、維新ブームの感想を求めると、「ブームなんてのは、マスコミさんがつくりあげているものでしょ」と苛立ち混じりに。“大物の余裕”は感じられなかった。
※週刊ポスト2012年8月31日号