台湾のエレクトロニクス企業・鴻海精密工業を率いる郭台銘(テリー・ゴウ)会長が、「今のおたくの株価なら、うちはシャープ本体を丸ごと買収することだってできるんですよ」と、シャープ幹部にすごんでみせたという(『日本経済新聞』電子版8月25日付)。大前研一氏も台湾勢らによる日本企業の買収攻勢は続くと見ている。
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この先、凋落した日本のエレクトロニクス企業は、台湾企業か韓国企業による買収攻勢に晒されるだろう。おそらくシャープは獰猛な鴻海の郭会長にかき回され、冒頭の言葉通り丸ごと買収されるのではないか。
半導体大手のルネサスエレクトロニクスや富士通の半導体部門は、やはり台湾のファウンドリ(半導体受託製造)で世界最大手のTSMC(台湾積体電路製造)による買収が濃厚だと思う。
TSMCの張忠謀(モリス・チャン) 会長は「台湾半導体産業の父」とも呼ばれる温厚な人物なので手荒なことはしないだろうが、自動車向けマイコンで4割のシェアを持ち、顧客の細かい注文通りに設計できるエンジニアが大勢いるルネサスは魅力的なはずだ。ルネサスがさらに窮地に追い込まれて時価総額が下がり、熟柿が落ちてくるのを待っているに違いない。
そしてソニーの買収に名乗りを上げるとすれば、サムスン電子だろう。
なぜならソニーにはサムスンにない映画、音楽、ゲームなどのソフト部門があり、事業ポートフォリオがずれているからだ。しかも、ソニーのボリュームを取り込んでサムスンのコスト構造にしたら、すぐに利益が出る。技術力も高い。サムスンにとってソニーは魅力的な会社だと思う。
残る“売り物”はパナソニックだが、買収する可能性があるとすればLGぐらいだ。
パナソニックはテレビなどのブラウングッズ(AV機器)は赤字だが、白物家電はまだ利益が出ている。LGは白物家電でスウェーデンのエレクトロラックス、アメリカのワールプール、中国のハイアールと世界シェアを争っている。欧米や途上国では強いが、日本市場では全く売れていない。これから世界でサムスン相手に戦っていくためにパナソニックを買収するというのは悪い戦略ではないだろう。
※SAPIO2012年8月22・29日号