消費税引き上げ法案が成立した。2014年4月には5%から8%へ、2015年10月からは8%から10%に引き上げられる。
消費税には所得が低い人ほど負担率が重くなる「逆進性」があるとされる。その解消のために検討されているのが、食料品などの“生活必需品”の税率を低くする「軽減税率」である。
ヨーロッパなどでは消費税に相当する付加価値税に「軽減税率」を導入している国が大半だ。だが、何を生活必需品と見なして税率を低くするかは国によって異なり、そこにはその国なりの理由があるようだ。
フランスではキャビアは標準税率の19.6%が課せられるが、フォアグラやトリュフには“国内産業の保護”を理由に軽減税率(5.5%)が適用される。同様に、マーガリンは標準課税で、より贅沢に思えるバターは軽減税率。これもバターを作る酪農家の保護が目的だといわれている。
ドイツでは「水道水を飲めばいい」という理由からか、ミネラルウォーターが贅沢品に分類され19%課税され、牛乳やコーヒーは生活必需品として7%の軽減税率が適用される。
食料品以外の軽減税率の対象をみると、医薬品は多くの国がゼロ税率か軽減税率。日本でも真っ先に議論されるべきだ。
ヨーロッパでは「知識には課税しない」という理念と伝統があり、新聞や雑誌、芸術作品や劇場などの入場料も軽減税率とされるケースが多い。
特に近年は、軽減税率の適用に文化保護や国民への教養機会の提供といった観点が重要視されている。国民が豊かで文化的な生活を送るためには、情報の入手や、読書習慣の形成が欠かせない。そのことからも、新聞や雑誌、書籍といった出版物はヨーロッパ諸国などと同様にゼロ税率、軽減税率の対象とすべきだろう。
他にもイギリスは子供用の衣服や靴は0%で、チャイルドシートや避妊具も軽減税率(5%)の対象だ。
※週刊ポスト2012年8月31日号