滋賀県大津市の中2いじめ自殺事件をきっかけに、全国各地で次々と明らかになったいじめ問題。学校があてにならないこともあることがわかったいま、親は一体どのようにして子供を守ればいいのだろうか。かつて、自らもいじめられた経験を持ち、わが子もいじめの標的となった河相我聞(37才)が明かしたその壮絶な体験から、親としてできること、やるべきことを考える。
河相が苦笑交じりにいった。
「ぼくは小学4年生ごろから中学1年生まで名前が変だとからかわれ、仲間はずれにされました。カッターで上履きをズタズタに切り裂かれたことも。それで母親に、『学校に行きたくない』っていったんです。そんなことには動じない母親で、『行かなくてもいいから働きな』っていわれ、それが芸能界にはいるきっかけなんです」
現在18才になる長男と10才の次男の父親となった河相。長男が小学3年生の時、いじめられたと帰ってきた。これまで見てきた中学校のケースと違い、舞台は小学校。おのずと解決法が違う。
「本人がいじめととらえていても、子供同士のふざけ合いかもしれませんからね。この時、親が神経質になってしまうと冷静に対処できないので、子供もいいづらくなってしまう気がします。2人の子供の話は別々に、じっくり聞いてやるようにしてきました」(河相・以下「」内同)
入浴中に話を聞くと、長男は、「汚いから、机を離せ」といわれ、数日後には、同じ生徒から殴られたと訴えてきた。
「もしいやだったら、学校休めばいいし、行ってみて、同じことされたらパパにいいな、とだけ伝えました」
父親の言葉に長男は、「いやだけど、学校に行ってみるよ」と自信なさそうに一言ポツリと話したという。河相の話。
「子供はそれなりにつらい気持ちを訴えているので、パパが受けたいじめよりずっとマシだよとか、そんな弱いことではダメだとかは決していいません。それはつらかったねと、カウンセリングに近い受け止め方をしていました」
子供は普段の親の行動を見て、話すべきかどうかを判断すると河相は思っている。
「この親なら、おおごとにしないでうまく解決してくれると思えば、子供は自分から話してくれます。いじめの事実を知ったからと、すべてを話せと突然いっても、子供なりにその後のことを考えるから話せないこともあります」
河相はいじめの事実を知っても、学校に行って対応策を求めるようなことはしていない。しかし、いじめる子に会った時などは、その子に声をかけた。
「いつも遊んでくれてありがとう」
子供同士のいじめは、本人が乗り越えていくもの――これが河相のいじめに対する基本的な考え方だ。
「いじめる子を責めるのではなく、君のことは息子から聞いて全部わかっているんだよと、相手に伝われば、小学生くらいのいじめは防げます」
しかし、いじめの度合いが深刻になれば、そうもいっていられなくなるだろう。
「呼び出されて殴られたり、脅かされ金品を奪われたりするのは、これは犯罪。そういう連中とは会わないのがいちばん。でも、子供の立場からすれば、歩いていて出会ったらどうしようって考える。そういう時こそ親が実際そばにいて守ってやればいいし、警察に通報したっていいと思う」
※女性セブン2012年9月6日号