「日本に謝罪と反省は求めない」「天皇陛下の訪韓に(歴史問題が関係した)問題は特にない」
ほんの4年前に、李明博・韓国大統領が公式会見で発した言葉だ。それが政権末期で求心力が低下した途端に掌を返して竹島へ強行上陸し、天皇陛下訪韓の条件として謝罪を求める。そして韓国国民はそれに喝采を送る。この国は、「反日」以外に国民をまとめる方法を知らないのだろうか。残念ながら、同じレベルで冷静な議論ができる国とは到底思えない。品格なき暴走に、日本人はどう向き合うべきなのか、落合信彦氏が解説する。
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ロンドン・オリンピックが閉幕した。世界中のテレビや新聞は約2週間にわたって自国選手の活躍を報じ続けた。だが、本来オリンピックは自国の選手だけを応援するためのものではない。
鍛え上げられた肉体や技の美しさは、観る者の心を動かす。古代ギリシャで行なわれたオリンピックでは競技者たちは皆、裸体で競い合ったとされる。観客は競技だけでなく、選手たちの美しい肉体を惜しみなく称賛したのだ。メダルはなく、勝者に与えられるのは栄光と名誉のシンボル、月桂冠だけ。また古代オリンピックでは、開催が近づくと都市国家間での戦争が休止された。
つまり、人種や国籍を超えて人間の素晴らしい肉体美とパフォーマンスに拍手を送るために、オリンピックは存在する。自国選手の戦績に一喜一憂するばかりでは、安易なナショナリズムの高揚にすぎない。
しかし、現代のオリンピックはそうした理想とはかけ離れたものになっている。今回の大会で言えば、終盤になって悲しむべき出来事があった。男子サッカーの3位決定戦で日本に勝利した韓国の選手・朴鍾佑(パク・ジョンウ)が、島根県の竹島について「独島はわれわれの領土」と書かれたボードを掲げ、フィールドを駆け回った件だ。
その後、韓国チームメンバーがフィールド上に広げていた巨大な韓国国旗の上にそのボードが置かれた。韓国の選手はオリンピックの試合会場にこの問題を持ち込めば、世界中の注目を集められると思ったのであろう。そんなオリンピック精神に反するメンタリティの国は、次の五輪の出場資格を剝奪されてもいいくらいだと思う。
しかも、この愚行の後に韓国国内ではボードを掲げた選手がメダル獲得とセットになっていた兵役免除を手にできるかで盛り上がったという。結局、IOCがメダルを剝奪しても兵役免除の特典は与えられるようだ。オリンピックを穢した恥ずべき行為は脇に置いて、“ご褒美”が与えられたのである。私は怒りよりもむしろ、彼の国と国民のあまりの幼稚さに哀しみを覚えた。
※SAPIO2012年9月19日号