ライフ

アルツハイマー病 脳の中でのみ糖尿病を発症している病態

 白澤卓二氏は1958年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。アンチエイジングの第一人者として著書やテレビ出演も多い白澤氏が、糖尿病とアルツハイマー病との関係について解説する。

 * * *
 米国ペンシルバニア大学医学部精神医学・神経学のスティーブン・アーノルド教授らの研究チームは、糖尿病を合併していないアルツハイマー病の患者の剖検脳を使って、神経細胞におけるインスリン抵抗性を調べた。

 もともと記憶を司っている大脳皮質の海馬と呼ばれる部分に最初に老人斑(アルツハイマー病で特徴的に観察される脳のシミ)が出現すると、海馬の神経細胞が死滅して、アルツハイマー病の症状の一つである記憶障害を起こすことが知られている。そこで、アルツハイマー病の患者で糖尿病を合併していない人の脳を調べた結果、海馬においてインスリンの効きが悪くなっていることが明らかとなった。つまり“脳が糖尿状態に陥っている”らしいのだ。

 さらに、このインスリン抵抗性を、軽度認知機能障害(MCI)の患者や認知症を発症していない患者の脳と比較・検討したところ、インスリン抵抗性は記憶障害の重症度に関連していることが分かった。また興味深いことに、これらの患者は全身の糖尿病は発症していないのに脳の中でのみ糖尿病を発症しているような病態だったという。アーノルド教授は、こう考察している。

「これまで糖尿病は、インスリンが全く分泌できない1型糖尿病と、インスリンの効きが悪くなる2型糖尿病とに分類されてきたが、アルツハイマー病は“3型糖尿病”と呼ばれるべき証拠が得られた」

 お昼に麺類やご飯などの炭水化物を摂取すると、食後1時間から1時間半ぐらいしてから、激しい睡魔に襲われるサラリーマンも多いと思う。お昼に食べた炭水化物は、食後の血糖を急上昇させる。食後高血糖は膵臓からのインスリンの分泌を刺激するので、高血糖になればなるほどインスリンがたくさん分泌される。過剰なインスリンは低血糖を引き起こすとともに、インスリンの効きが悪くなる。

 このインスリン抵抗性のために、集中力が低下したり、睡魔を引き起こしたりする可能性も指摘されている。脳内のインスリンの効き方は認知症を発症する前から日々の生活の中で脳の機能に影響を与えているのかもしれない。

※週刊ポスト2012年9月7日号

関連キーワード

トピックス

天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン