最近、電車の中でスポーツ新聞を読んでいる人を以前ほどは見なくなった。世間がスポーツに興味を失ったのか。そうではない。誤解を恐れずにいえば、媒体に魅力を感じなくなったからではないか。「週刊ポスト」は急遽、現場をよく知る4人の記者を集め、スポーツ紙の現状と未来を語ってもらった。
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B記者:記者の専門知識不足は深刻かもしれないね。先日、ボクシングの現場でこんなことがあった。挑戦者が王者に対して「お前は逆立ちしてもオレには勝てない」と吠えたんです。欧米ではこんな時、「お前が負けた時はどうする」なんて記者が食いついて、派手に記事にするのが常なんですが、日本の記者は知らないのかポカンとしていた。後で挑戦者は、「せっかくリップ・サービスをしたのに、日本の記者は仕事をしないのか」と不思議がっていたらしい(笑い)。
Cデスク:異動の多さは取材力不足にも繋がっている。事件記事だって、結局通信社頼りになっている現状がある。新人や若手記者を行かせて、現場からメールで原稿と記者が撮った写真を送らせるけど、やっぱりひどい。育てないとあかんけど、すぐいなくなるヤツが多いし。
D記者:芸能記事だって、バーターばかりじゃないですか。なんでこんなつまんない記事やるんだろうって思ったら、「これをやったらン万円もらえるから」だって。
Aデスク:そうなんだよな。各社には映画とか演劇とか、芸能欄で活躍できるこの道ウン十年というエキスパート記者がいるのに、結局なんでもない会見記事にスペースを取られてしまう。今各社が必死でやっているAKB記事も、200万人といわれるファンを読者にしたい、っていう狙いだけ。とにかく目先の銭に踊らされている感はあるね。
※週刊ポスト2012年9月14日号