中国では共産党幹部の不正・腐敗への不満が爆発し、権力側の弾圧をはねのけて過激な抗議行動が続発している。反日デモも多数行われている。中国の最新のデモ事情を評論家の宮崎正弘氏がレポートする。
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中国では1日平均500件、年間に18万件の暴動が発生している。今年7月、江蘇省南通市にある日本の王子製紙工場をめぐって大規模抗議デモが発生した。
参加者たちは同工場から啓東市の海につながる排水管建設計画の中止を要求する一方、地元の啓東市政府高官の腐敗に対しても果敢に抗議した。
5000人を超える群衆が政府庁舎に集まり、1000人以上が敷地内になだれ込んだ。警察車両をひっくり返して破壊、一部は庁舎に乱入して、役人がよく賄賂として受け取る高級酒やワイン、たばこのほか、書類なども窓から放り投げた。
背景にあるのは「反日感情」ではない。揚子江下流を漁場とする漁民(およそ4万人)が目的とした補償金に、若者の「公害」「汚染」という新感覚が加わったことが大きな要因だ。
最近のデモ・抗議行動に若者が積極的に参加することも従来の「暴動」との違いである。 ある中国の専門家はこう分析する。
「学生の参加が目立ち、卒業資格停止や退学処分にするなど教師から脅されても、まったく懼(おそ)れずに抗議行動に加わる。中学生、高校生さえ参加する。若い世代は公害、汚染に敏感だ」
7月の四川省徳陽市什ホウで起きた暴動はその典型だった。金属工場プラントの新設をめぐって「公害反対」を掲げた市民の抗議活動の様子が、ツイッター、ブログで広がると、学生が主体の過激な抗議行動へと変化していった。彼らもまた市庁舎を襲撃、破壊し、副市長を負傷させた。だが、武装警察は催涙弾を打つ程度で、血の弾圧には踏み切らなかった。
※SAPIO2012年9月19日号