白澤卓二氏は1958年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。アンチエイジングの第一人者として著書やテレビ出演も多い白澤氏が、痛風発作とアルコールとの関係について解説する。
* * *
痛風は、高尿酸血症が原因で関節炎を起こす疾患で、皮膚に風が当たっただけでも関節が痛むことから「痛風」と命名されたとされる。健康な状態でも血中には一定量の尿酸が含有されているが、この尿酸の濃度が著しく上昇すると、特に体温が低い足部などで尿酸が溶解しきれずに関節内で結晶化し、激しい痛みを伴った発作を誘発する。
血中の尿酸値が高いからといって必ずしも痛風発作を起こすわけではないが、痛風患者の90%以上が男性で外食がちの成人に好発するのが特徴である。これまでの疫学的研究からアルコールが痛風発作を誘発することが知られ、最近の調査でも、特にビールがそのリスクを高めるのに対し、ワインはリスクを高めないことがわかってきている。
マサチューセッツ総合病院リウマチ科のヒョン・コワ博士は健常な成人男性4万7150人を12年間追跡し、アルコールの摂取量と痛風発作との関連性を調査した。
追跡した12年間に730回の痛風発作が観察されたが、アルコールを10~15グラム摂取する男性の痛風発作リスクはアルコールを全く摂取しない男性に比べて1.32倍、15~30グラム摂取する男性は1.49倍、30~50グラム摂取する男性は1.96倍、50グラム以上摂取する男性は2.53倍に上昇していた。
中でもビールは発症リスクを最も上昇させるアルコール飲料で、1日あたりビール12オンス(約355ミリリットル)飲むと、痛風発作の危険度を1.49倍に上昇させていることがわかった。一方、ワインを摂取する男性のリスクは上昇していなかったことから、ビールとワインの差が注目されている。
※週刊ポスト2012年9月14日号