「セルフ式うどん店」が増え続けている。市場調査会社の富士経済によると、「立ち食い・セルフ式そばうどん」の市場規模は2156億円(2011年見込み)で、2016年には2450億円まで膨れ上がることが見込まれている。
お盆をカウンターに沿って移動させながらうどんやトッピング総菜を受け取り、前払いで会計を済ませるこの業態は、うどんの本場である讃岐地方では一般的だったが、2000年以降、全国各地の駅近やショッピングセンター(SC)のフードコーナーなど至る所で見られるようになった。
そのきっかけをつくったのが、「はなまるうどん」、「丸亀製麺」という2強チェーン店の登場だった。飲食業界のニュースサイト『フードスタジアム』編集長の佐藤こうぞう氏が振り返る。
「2000年創業の『はなまるうどん』は香川県出身の社長がフランチャイズ事業に乗り出し、2002年に東京・渋谷に初進出。かけうどん1杯100円という低価格も受けて何百人という大行列を記録する人気店になりました。かたや『丸亀製麺』は香川発祥ではありませんが、各店舗で客に調理している様子を見せる“演出”が受けて2006年ごろから急成長を遂げています」
現在、「丸亀製麺」は約620店で今後も年間100店以上の出店を予定している。2006年から牛丼の吉野家グループ入りを果たした「はなまるうどん」も、約310店を展開中で、年間最大50店程度の出店規模を維持するなど、その勢いはとどまるところを知らない。
さらに、上位チェーンの間隙を縫う形で、新規参入組のセルフ式うどん店も目立つ存在になっている。
「大型SCへの出店を果たしている『四代目横井製麺所』や『宮武讃岐製麺所』、それに270円均一居酒屋『金の蔵』で注目を浴びる三光マーケティングフーズも『楽釜製麺所』をオープンさせ、新宿・歌舞伎町や渋谷といった一等地に出店しています」(前出・佐藤氏)
そば処『そじ坊』で実績のあるグルメ杵屋も、新メニュー開発の実験店舗「讃岐製麺麦まる」を展開している。まさに新旧入り乱れた“うどんウォーズ”は拡大の一途をたどっているのである。
しかし、「もはや市場は飽和状態。チェーン展開をすればするほど他店との差別化が難しくなっている」と、佐藤氏は指摘する。その理由はコストダウンに伴う味の低下だ。
「どのチェーンも製麺機械に頼り過ぎて手打ち感がなくなり、麺にコシがなくなっています。また、讃岐うどんの命ともいえるネギやショウガといった薬味を、安い中国産の輸入ものに変えて味を落とした店もあります。これでは、いくら茹で方に自信のある職人がつくっても、本場の味からは遠ざかっていくだけです」
いくら多店舗展開を図っても、品質の追求を怠れば「客離れ→淘汰」という最悪のシナリオに追い込まれるのは、自明の理だろう。