チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世を信奉する中央チベット政府(CTA)のデッキ・チョヤン情報・国際関係相(外相に相当)が、日本メディアとして初めて本誌インタビューに応じた。
中国内のチベット人は中国政府によってデモや集会の自由さえ奪われ、抗議の焼身自殺が後を絶たない痛ましい状況に追い込まれている。しかし、日本政府をはじめ先進各国は、中国の経済力、軍事力の膨張に腰が引けて見て見ぬふりを決め込んでいる。チョヤンさんは、チベットの置かれた苦境を語った。
* * *
私たちはチベット人の厳しい状況を日本の人々に知ってもらいたい。日本はアジアで最大の民主主義国家であり、最も経済が発展しており、チベットに関する理解も歴史的に深い。日本はずっとダライ・ラマ法王に関心を寄せて支援してくれた。私たちは深く感謝している。日本はチベットにとって古い友人だ。
私自身、今年6月に中央チベット政府の情報・国際関係担当相(外相)として初めて訪日し、多くの国会議員や有識者に会えた。
今年4月に中央チベット政府のセンゲ首相が日本を訪れた際にも、多くの国会議員や要人と会っている。ダライ・ラマ法王もほとんど毎年、日本を訪れている。
ただ、日本は中国と隣国同士であり、日本政府はチベット側に肩入れできない事情があることも十分わかる。
日本は正義と平和を体現し、アジアのなかで素晴らしい理念を実現している。それはチベットの目指す価値観と通じるものといえる。日本はチベット人の見本であり、私たちを励ます存在だ。
チベットの未来が中国指導部によって大きく左右されることは事実だ。秋には中国共産党大会が開催され、新たな最高指導者が誕生する。その習近平・国家副主席は保守的な言動で注目されており、チベット政策についても専制主義的な傾向が強いようだ。
しかし、人権抑圧はチベット内の情勢を不安定化させるだけで、中国政府にとってもマイナスだ。少数民族を弾圧しても中国が得することは何もない。人権を尊重し、伝統的な言語や文化を守ることは人類すべてにとって重要だ。そのために、平和的に対話することこそ利益になる。私たちは中国政府に対チベット政策の変更を訴え続けていく。
(インタビュー・構成 相馬勝)
※SAPIO2012年9月19日号