「天才は一芸に秀でる傾向が強い」と話すのは、『ホンマでっか!?TV』でお馴染みの脳科学者・澤口俊之氏。しかし、「万能の天才」と賞賛されるレオナルド・ダ・ヴィンチだけは違い、とても珍しい「天才」だったという。ここでは、ダ・ヴィンチを「万能の天才」たらしめたイメージ思考と“左手”について澤口氏が分析する。
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脳科学的に興味深いのは、ダ・ヴィンチが左利きだったことです。左利きには数学系の天才が多いといわれています。
言語を司る主要な神経システムは左脳にありますが、言語的かつ論理的な思考は、この左脳を中心に行われます。
一方、右脳には数学的才能や芸術的才能にかかわる神経システムがあり、左利きの人は言語活動も含め、この右脳で思考する傾向があります(このため左利きの人は、吃音など言語活動にハンディを負うこともあります)。
むろん、左脳と右脳という二分法は極論です。左右の脳は協調して働くことがほとんどで、どちらかの脳だけが働くことはごく特殊な状況(実験場面など)を除いてあり得ません。
ただし、左利きの人の場合、言語系システムも右脳を優位に働かせるという独自性があるため、左右脳の協働的作業が独特になることがあり、論理的思考も独特で「数学の天才」になりやすいようなのです。
こうしてみると、ダ・ヴィンチの“万能”の鍵は、卓越した「イメージ思考力」と、「左利き」の合わせワザにあったと思われます。
※女性セブン2012年9月20日号