世界中の醸造士たちが入賞を目指す“ビールの五輪”『ワールド・ビアカップ』。今年は54か国、799醸造所、3921銘柄のビールが95部門に分けられ、金、銀、銅のメダルを目指して味を競い合った。
「日本の地ビールのレベルは、世界でもトップ5に入るのではないでしょうか」と語るのは、日本ビアジャーナリスト協会会長で、前回のワールド・ビアカップで審査員を務めた藤原ヒロユキさん。
「1994年の酒税法改正で、日本各地で地ビールブームが起こりました。当時はあまり特徴もなく、お土産扱いの域でしたね。でも今は違います。
今回の受賞ビールを飲めばわかると思いますが実に個性的。地ビールはドイツ、ベルギー、イギリスなど様々な国のビールを手本にし、原料の一部に地元の水や特産物を使って造ります。だから味も色もバリエーション豊か。ビールのイメージが変わると思いますよ」
今回、“フルーツウィートビール”部門で金賞を受賞したのは、大阪府の箕面ビール「ゆずホ和イト」。醸造長の大下香緒里さんは、「外国人はゆずを知らないので、受賞するとは思わなかった」と語る。
箕面ビールは大阪北摂で1996年に創業した。短大卒業を控えた香緒里さんに卸酒屋を営む父親が「明日からビールを造れ」と突然命じて始まった。ブームが下火になり苦しい時期もあったが、妹2人を引き込み3人姉妹で協力。地道に品評会で受賞を重ね、今回、栄えある金賞を受賞した。
「ゆずホ和イト」は地元のものを使って箕面をアピールしたいという思いで、5年前から冬季限定で醸造し、味を極めてきた。ゆずが生み出す風味は唯一無二。
「大量生産はできないけど、新鮮なまま飲んでもらえるのが地ビールのよさ。地元の素材や季節感にこだわった日本独自のビールを造っていきます」と香緒里さん。
※週刊ポスト2012年9月21・28日号