進む非婚・晩婚化。国勢調査(2010年)によると、25~29歳の女性の約6割、男性は約7割が未婚である。この数字は一貫して増加傾向にあり、30~34歳、35~39歳の未婚率の数字も同様だ。結婚が実現性の低い夢になりつつあることについて、ジャーナリスト・白河桃子氏が分析する。
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大きいのは、経済面の問題です。結婚相手に600万円以上の年収を望む女性は合計で33.4%、という数字の調査があります。また、2004年の別の調査では東京都に住む未婚女性の約39%が結婚相手に年収600万円以上を希望するというデータもあります。
この「600万円以上」という数字は未婚女性の口からよく出てくる数字なのですが、自分が仕事を辞めて出産・育児をする時、夫に自分と子供を養えるだけの経済力、つまり「自分の年収×2」を稼いでほしいという考えが背景にあるようです。
ところが、年収600万円以上を稼ぐ独身男性の割合は、わずか5.7%にすぎません。
20人に1つという少ない席を争う“椅子取りゲーム”では、座れない人が続出するのは当たり前です。
未婚女性は贅沢を望んでいるわけではありません。
正社員の女性が結婚や出産で一度退職してしまうと、一部の大企業や公務員の恵まれた人以外は、フルタイムの仕事に戻ることはできません。
その場合、生涯賃金として1億5000万円から2億円ほどが失われると言われています。そんな状況では、収入の少ない、不安定な男性に将来を託すのは非常にリスキーです。終身雇用や年功序列賃金が崩壊しつつあり、非正規雇用の若い男性が増える中で、なかなか結婚に踏み切れないでいるわけです。
先進国では、女性の社会進出と出生率はセットで上がっていくものですが、残念ながら日本では妊娠・出産後も継続してフルタイムで働く女性はここ20年間、20%から増えていません。女性の社会進出がなかなか進まない上に、若い男性の“収入崩壊”が想像以上の早さで進んでいます。
結婚・出産を経ても女性がフルタイムで働ける環境になれば、女性が男性に求める収入はそれほど多くなくてもよくなり、結婚できる人は増えるでしょう。そうした会社や社会の体制を整えることが大切です。それには、妊娠出産の前後には1人分の仕事を2人で分担するワークシェアリングのような柔軟な働き方が容認される必要があります。
※SAPIO2012年9月19日号