2~3年前から首都圏のオシャレスポットを中心にパンケーキ専門店が次々と誕生し、空前の“パンケーキブーム”が訪れている。火付け役となったのは、ハワイなど、海外から続々と上陸した店たちだ。いまだ行列の絶えない人気店を紹介しよう。
■2008年4月:“世界一の朝食”と名高く、セレブ御用達として有名なシドニー発の「bills」。リコッタチーズ入りのリコッタパンケーキが人気。鎌倉・七里ヶ浜、お台場など4店舗。
■2010年3月:ハワイ生まれの人気パンケーキ店「エッグスンシングス」。生クリームなしに語れないパンケーキ。原宿、横浜山下公園、湘南江の島の3店舗
■2012年7月:ハワイの地元誌が読者の投票によって選ぶグルメ賞で「2011年ベスト朝食賞金賞」を受賞した「カフェ・カイラ」。フルーツメガ盛りが特徴。スカイツリー近くにオープン。整理券を配るほどの盛況ぶり。
そんな中、先月も新たな店が登場した。沖縄・恩納村の西海岸リゾートエリアにオープンしたのはハワイアンパンケーキハウス『Paanilani(パニラニ)』。開業したのは、カリスマ・パンケーキブロガーのパチコさんだ。これまでに500店舗以上のパンケーキを食べ歩き、300店舗以上をブログで紹介、期間限定で東京に店を出した際には、3時間待ちの行列ができたほどの人気者。パンケーキが好きで好きで、ついには自分のお店を開いたパチコさんの店に、パンケーキファンがこぞって訪れているという。
いずれもパンケーキは、おやつとしてだけではなく、朝食として食べるスタイルとともに日本に定着しつつある。“朝活”に励むサラリーマンやOLたちに好評だ。「エッグスンシングス」に目がないという26歳のOLは言う。「いつも1時間は並ぶけど、1週間に1回は食べたくなる。クリームも甘すぎません。朝食べると、一日、爽やかに過ごせる気がするんです」
一方、“上陸系”ばかりが人気かといえばそうでもないようだ。
日本の有名パンケーキ店の草分け的存在といえるのは、万惣フルーツパーラー(本店・神田須田町)のホットケーキ。池波正太郎も愛した店として知られていたが、残念ながら今年3月に全店閉店し、166年におよぶ歴史に幕を下ろした。レシピは公開せず、を貫いてきた秘伝の看板メニューを味わうことはできなくなった。
それでも、パンケーキ市場の広がりにともなって、“老舗店”の存在感が高まっているところもある。その筆頭が帝国ホテルだろう。1953年に登場して以来、根強い人気を誇る「インペリアルパンケーキ」目当てに、いま帝国ホテルを訪れる若い女性が増えているという。もう一つの名門ホテル、ホテルニューオータニの「ニューオータニ特製パンケーキ」も、1か月に2000食出るほどの人気メニューだ。はなまるマーケット(TBS)の2011年おめざランキング第1位に輝いた。
ハワイなどのパンケーキが薄めでふわふわしており、豪華なトッピングを楽しむのに対し、日本の老舗店パンケーキは、程よい厚みがあり、しっとりとした歯触りが特徴。バターやメープルシロップとともに味わうのが王道だ。老舗店ばかりではなく、2010年からは続々と専門店も登場しており、今後、パンケーキの幅はさらに広がって行きそうだ。
さらに、家で味わう“手作り派”も増加している。森永製菓が2月に発売した「パンケーキミックス」の発売3ヵ月の売り上げは、当初計画の5倍となった。
新しい風をもたらした上陸店、伝統の老舗店、家庭の味と、パンケーキ人気は各方面を潤わしている。