ライフ

トヨタ・オーリスの赤パン過激CM 女が嫌がるとは限らない

 常識とは18歳までに身に付けた偏見のコレクションのことをいう――そう言い切ってみせたのはE・アインシュタイン。何かと揺らぎの多い昨今、作家で五感生活研究所の山下柚実氏が着目したのがトヨタのCMである。

 * * *
「常識に尻を向けろ」。その言葉通りのCMが話題を呼んでいます。

 トップレスの金髪モデルが、真っ赤なパンティ一枚の姿で歩いていく。背後から追っていくカメラ。女性が振り向く。あっ……!

 フラットな胸。もう一度、じいっと凝視してしまう。やっぱり平ら。そうか、この人、男なのか……。

 自分の中にあるガチガチの「常識」を一気にくつがえされてしまう。「トヨタ過激CM」という呼び方が定着するほど、「保守的な」企業にしては何とも強烈なインパクトを放っている、新型オーリスのCM。

 その中で私たちの目を釘付けにしているのは、イスラエルの19歳男性モデル、スタブ・ストラシュコさんの身体。お尻の形や膨らみ、女性に見まがうほど。アンドロジナス=「中性的な」魅力で世界中で活躍しているのだとか。

 社会的反響の大きさゆえか、このCMは「お堅いトヨタ オドロキCM」という見出しで新聞記事にもなりました。

「東洋大の小川純生教授(消費者行動論)は『今までにはないCMで、話題にはなる』とトヨタの意気込みを買う一方、『女性は嫌がるかもしれない』と指摘」(東京新聞 2012.8.25)

 このコメントを読んで、私は首をかしげたのです。なぜ、女性が「嫌がる」のでしょう。その理由も説明も記事にはありませんでした。

 本当に女性が嫌がる? そうとは限らない。少なくとも私は、「アッパレ!」と思いました。自分の中にある、錆ついた先入観を、鮮やかにひっくり返されたから。その時、人は快感を覚える。胸がスっとすく。現代のコンセプチュアル・アートにも通じるような、クリエイティブな驚きと楽しさがそこにある。

 そして。「すべてを見られる」「裸体を人目にさらされる」「モノのように観察される」感覚は、今や女性だけが引き受けるものではありません。男性も「見られること」をわかちあう時代なのだと、つくづく実感。「評価される」ことの痛みも含めて。

 その意味で、実にクリティカルなCM表現ではないでしょうか。「トヨタの過激CM」は、男と女の新しい時代の流れと変化を映しているのです。

関連記事

トピックス

2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン
新政治団体「12平和党」設立。2月12日、記者会見するデヴィ夫人ら(時事通信フォト)
《デヴィ夫人が禁止を訴える犬食》保護団体代表がかつて遭遇した驚くべき体験 譲渡会に現れ犬を2頭欲しいと言った男に激怒「幸せになるんだよと送り出したのに冗談じゃない」
NEWSポストセブン
警視庁が押収した車両=9日、東京都江東区(時事通信フォト)
《”アルヴェル”が人気》盗難車のナンバープレート付け替えで整備会社の社長逮捕 違法な「ニコイチ」高級改造車を買い求める人たちの事情
NEWSポストセブン
地元の知人にもたびたび“金銭面の余裕ぶり”をみせていたという中居正広(52)
「もう人目につく仕事は無理じゃないか」中居正広氏の実兄が明かした「性暴力認定」後の生き方「これもある意味、タイミングだったんじゃないかな」
NEWSポストセブン
『傷だらけの天使』出演当時を振り返る水谷豊
【放送から50年】水谷豊が語る『傷だらけの天使』 リーゼントにこだわった理由と独特の口調「アニキ~」の原点
週刊ポスト
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
《英国史上最悪のレイプ犯の衝撃》中国人留学生容疑者の素顔と卑劣な犯行手口「アプリで自室に呼び危険な薬を酒に混ぜ…」「“性犯罪 の記念品”を所持」 
NEWSポストセブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《離婚後も“石橋姓”名乗る鈴木保奈美の沈黙》セクハラ騒動の石橋貴明と“スープも冷めない距離”で生活する元夫婦の関係「何とかなるさっていう人でいたい」
NEWSポストセブン
原監督も心配する中居正広(写真は2021年)
「落ち着くことはないでしょ」中居正広氏の実兄が現在の心境を吐露「全く連絡取っていない」「そっとしておくのも優しさ」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
〈山口組分裂抗争終結〉「体調が悪かろうが這ってでも来い」直参組長への“異例の招集状” 司忍組長を悩ます「七代目体制」
NEWSポストセブン
休養を発表した中居正広
【独自】「ありえないよ…」中居正広氏の実兄が激白した“性暴力認定”への思い「母親が電話しても連絡が返ってこない」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(時事通信フォト)
「うなぎパイ渡せた!」悠仁さまに筑波大の学生らが“地元銘菓を渡すブーム”…実際に手渡された食品はどうなる
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン