10月中旬に開催予定とみられる中国共産党の第18回党大会を前に、中国政府直属の証券業監督管理委員会は9月上旬、各証券会社に「最近の市場の動向を研究し、現在の市場における積極的な観点をまとめよ」という趣旨の通達が指示したという。
5年に1度の最重要会議を前に景気を回復させ、安定で平和な環境のなかで党大会を乗り切ろうという中国当局の思惑が透けてみせそうな通達だ。
同委員会の公式ホームページによれば「証券・先物監督管理システム治安維持業務ビデオ会議」がこのほど行なわれ、「証券・先物市場における治安維持業務について、資本市場の安全かつ安定的な運行が重要である」として、株式相場が治安維持に一役買うように、つまり、相場が上がるような材料を見つけ出して実行すべきだと結論づけたという。
中国では10月中旬にも党大会が開催されるとの観測が流れているが、今年に入ってから中国の経済繁栄の原動力となってきた輸出が伸び悩むと同時に、内需も落ち込んでおり、広東省や浙江省などでは労働者デモが多発し、社会情勢が不安定化しつつある。
また、株価も最高値の3分の1まで下がっていることから、中国政府は景気浮揚策として1兆円規模の資金を地方政府に投入するなどの景気てこ入れ策を計画している。この一環として、証券市場の活性化策を各証券会社に求めたとみられるが、中国当局が証券会社に相場上げを指示するのは異例中の異例だけに、「業界ではとまどっている」と北京のある証券会社幹部は明かしている。
しかし、中国は一党独裁体制で経済政策も政府の思いのままだけに、「巨額の投資ばかりでなく、有力国有企業のニューヨークや香港市場での新規上場など、あっと驚くようなことが起こるのではないか」とこの幹部は期待している。