尖閣諸島目指して次々と出航する中国漁船。中国メディアはその数、「1000隻」と報じた。中国当局は漁船の護衛のため漁業監視船派遣も示唆しており、日本側も海上保安庁の巡視船を現場海域に待機。尖閣を巡る緊張はかつてないほど高まっている。
中国メディアの多くは「日本政府の尖閣国有化」を非難することで世論を煽情。万が一の軍事衝突も辞さないとの論調だ。そんななか、香港大手メディアの蘋果日報(アップルデイリー)が12日付の同紙で興味深い見出しを掲げた。
〈砲艦外交を進める中国、武力衝突では中国に勝算なし〉
その記事の核となるのが中国の軍事評論家である黄東氏のコメントである。
〈もし開戦となれば、中日両国の海軍力、空軍力の比較から、中国海軍は全く日本の相手ではなく、空戦の場合は海戦ほど悲観的ではないものの、中国側に勝算はほとんどない〉
同紙は、漁民を送りこみ尖閣の実効支配を目論む当局の戦略は、「軍事行動の決行」ではなく「対日強硬姿勢の表明」に過ぎないと分析する。再び黄東氏。
〈北京(政府)は(島に対し)ずっと有効な管理を実施できておらず、形勢上明らかに不利な立場にある〉
本誌(9月14日号)も、「日本の海上自衛隊にはイージス艦などの高度な電子機器を搭載した世界最高水準のハイテク艦が揃い」「海自隊員の熟練度も中国軍より高い」と報じたが、中国メディア自身が「勝算なし」を認める格好―中国当局にも“冷静な判断”を望む。
※週刊ポスト2012年10月5日号