グループ全体で「1万人規模の人員削減」を掲げるNECは8月28日、早期希望退職制度に正社員2393名が応募したことを発表した。
ところがこの日、社内は別の事件で騒然となっていた。始業前のNEC本社ビルから、男性社員が飛び降り自殺をしたのだ。社員は39歳で希望退職の面談対象ではなかったが、社内では様々な憶測が飛び交った。それだけ今回のリストラが苛酷だったということだ。
NECのグループ会社に勤務する47歳男性社員は、自身がリストラ対象となったことにショックを受けた。
「人事評価はずっとB(Cを平均とする5段階評価)で、人事面談でも『必要な人材だ』といわれていましたが、4月に『プロジェクト支援センター』という新設部署に異動になりました。ちょうど特別転進支援施策という早期退職の計画が出された時期です。
仕事内容は『忙しい仕事のヘルプを行なう』というものでしたが、人員は各部署からの寄せ集め。もしやと思っていたら、案の定5月には以前の上司から『転進支援の説明がしたい』というメールが来ました。
一度は断わりましたが、元上司は勤務先まで出向いてアポを取りに来た。『誰でも一回は面談を受ける権利がある』と言葉は穏やかですが拒める様子はなく、受け入れざるを得なくなりました」
彼は4回の面談を受け、辞めないという意思を貫いたが、同僚には退職を受け入れた者も多い。
社会保険労務士でリストラ事情に詳しい佐藤広一氏は、「NECに限らず、電機業界全体で、今年は1993年以来の“新リストラ元年”です」という。
円高、中国・韓国勢の攻勢といった経営環境の悪化が直撃する電機業界では、現在、業界全体で13万人が人員削減対象になっており(電機産業の労働者からなる電機・情報ユニオンの調査)、かつてない規模でリストラが進行している。
また、これまで良くも悪くも「雇用の調整弁」だった非正規雇用にとどまらず、正社員にもリストラの嵐が吹き荒れている。
さらに、従来に比べて“追い込み”が厳しい。電機・情報ユニオンによると、ある大手メーカーでは昨年まで早期希望退職の面談は2回程度だったが、今年からは退職の意思がなくても10回以上の面談を求められるケースが珍しくないという。
※週刊ポスト2012年10月5日号