民主党の前原誠司・政調会長は維新の会の下に集う者たちを「橋下ベイビーズ」と揶揄した。学級崩壊状態の民主党に言われたくはないが、維新の会がどういった候補者で選挙を戦うのかはたしかに気になる。彼らは当選して議員になった時、橋下氏が掲げる政策を国会で実現できるのか。
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今後、維新の会が衆院選候補者の公募を進めるにあたって注目されるのが維新政治塾の塾生たちだ。この塾生888人の実名リストを『週刊ポスト』がスクープし話題を呼んだが、リストには地方議員たちに加え、弁護士や公認会計士、与野党国会議員の秘書経験者、元ファッションモデルで“美人すぎる市議”として話題になった伊藤良夏・大阪市議の実母、さらにはバラエティ番組『恋のから騒ぎ』(日テレ系)に出演経験のある元タレントで現・放送作家の名前まであった。
地方議員レベルの動きがある一方、気になるのはこうした「その他大勢」の塾生たちだが、皆一様に口を噤(つぐ)む。判で押したように、「取材は維新の会の事務局を通してほしい」と答えるのみだった。母が塾生で、自身の衆院選出馬が噂される伊藤市議にも取材を申し込んだが、同様の対応であった。
維新の会事務局に聞くと、「関係者が発言するとその言葉や内容が独り歩きしてしまうので、今はマスコミの取材は受けないよう伝えてある」とするが、仮にも国政選挙で公職に就こうとするのならば「党に止められているので何も喋れません」ではあまりに情けない。ある塾生は匿名を条件にこう語った。
「リストの流出以降、箝口令が敷かれている状態です。『メディアに出たら、その時点で公募で選ばれなくなると思ったほうがいい』という話も聞く。そもそも塾に入る際に我々は『誓約書』を書かされていて、〈維新政治塾運営委員の指示、決定に従う〉という項目が入っていますから、取材にはなかなかお答えできない……」
ちなみに誓約書の文言は入塾者に配布された塾生カードの裏面にも明記され、厳守が求められている。饒舌に語る一部と、沈黙を強いられるその他大勢そんな構図が浮かび上がってきた。
数合わせの駒にされそうな候補者たちが本当に〈指示、決定に従う〉のであれば、民主党のようにマニフェストを守るかで内紛は起きないのかもしれないが、ただただ親分に賛成するだけの国会議員ばかりになるのも考えものだ。
※SAPIO2012年10月3・10日号